日本では古来より「無闇に木を切ると災いを引き起こす」という言い伝えがあり、伐採をするときはお祓いが必要とされることもあります。
お祓いは神社の神職に依頼できますが、「そもそもお祓いって必要なの?」「お祓いってどんなことをするの?」と、わからないことだらけですよね。
そこで今回は、兵庫県神戸市に鎮座する「湊川神社(みなとがわじんじゃ)」の樹木伐採清祓(じゅもくばっさいきよはらい)をご紹介します!
広報室長の鈴木智子さんに、木を切る際のお祓いの流れや、依頼主が気をつけるべきことを伺いました。
よくある疑問にもお答えいただきましたので、木のお祓いを検討されている方必見です!
取材協力:湊川神社
兵庫県神戸市中央区多聞通にある神社。御祭神は楠木正成公(大楠公)。
ご利益は開運招福、厄除、家内安全、交通安全、夫婦良縁、情報業・流通業繁栄、学業成就、商売繁盛。
※当記事内の画像は「湊川神社」の提供画像につき無断転載・使用を禁じます。
神戸の名社 「楠公(なんこう)さん」
鈴木さん、本日はよろしくお願いします!さっそくですが、はじめに「湊川神社」について紹介をお願いします。
ありがとうございます!まさか、神戸の都会にこんなに緑豊かな神社があるとは驚きです。
吉田松陰や坂本龍馬、高杉晋作など、明治維新で名を馳せた志士たちが、正成公の墓に詣でたり、正成公の生き方を目標としていたそうですね。
一歩足を踏み入れるだけで心が洗われるような由緒ある名社、長年神戸っ子に親しまれ、多くの参拝者が訪れるのも納得です!
樹木伐採清祓は樹木への感謝の神事
「樹木伐採清祓」にはどのような意味が込められているのでしょうか?
日本では古来より「八百万の神」と言われ、「全てに神が宿る」と考えられてきました。
稲作をはじめとした農耕や漁撈(ぎょろう)などを通じて自然と共生するなかで、連綿と続く生命の尊さを実感し、あらゆるものを生みなす生命力も神々の働きとして捉えたのです。
そして、清浄な山や岩、木や滝などの自然物を神宿るものとして崇めてきました。
そのため、やむをえず樹を伐採するときには、樹木に宿る木霊に感謝し鎮まっていただくために清め祓いをします。
樹木伐採清祓は、日本人の暮らしの営みから生まれた、自然への感謝の気持ちをあらわす大切な儀式なんですね。
このようなお祓いは、昔からおこなわれているのでしょうか。
はい。
土地の神様を祀り、工事の無事進行・完了と土地・建造物が末長く安全堅固であることを祈願するために地鎮祭をおこなったりすることと同様に、古来からおこなわれてきた神事です。
ほかにも、湊川神社でおこなわれている祈願・祈祷には以下のようなものがあります。
地鎮祭 (じちんさい) | 土木工事や建築工事を始める前に行うとても重要なお祭りです。 その土地を祓い清め、土地を守る神様に、土地を使う許しを得て、工事の安全とその後の守護を祈願します。 |
入居清祓 (にゅうきょ きよはらい) | 新築、中古、賃貸等に関わらず、新生活の平安を願って引越しする際に新居をお祓いします。 地鎮祭がされたかどうかわからなければ、おこなっておいたほうがよいでしょう。 |
火入れ式 | 飲食店の開店や、工場におけるボイラーなどの始運転時に繁栄と安全を祈ります。 |
埋井祭 (まいせいさい) | 井戸の神様の恩恵に感謝し、使わなくなった井戸を清め、神様に昇っていただきます。 |
工事安全祈願祭 | 建物などを壊す工事を始めるときに今までに感謝をし、工事の安全を祈ります。 |
慰霊祭 | 社業に関わる実験などで、人間の生活の進歩のために役立ってくれた様々なものに感謝と慰霊の心を捧げる。 |
物事のはじまりと終わりに、これまでのことに感謝をし、これからのことを祈ることと、あらゆる物に感謝の心を持つことが「日本人の心」といえます。
当日の流れと準備
ここからは、実際に「湊川神社」でおこなわれているお祓いの流れや事前にしておくべき準備についてお話を伺います。
お祓いの流れや所要時間を教えてください。
タイムスケジュール※は以下です。
- 9:00
-
神職到着、祭壇設営
- 10:00
-
神事開始
- 祓詞奏上
(はらえことばそうじょう)
祓の神に詞を奏上します - 修祓
(しゅばつ)
神様をお招きする前に心身の罪穢(つみけがれ)を祓います - 神饌(神様に供える供え物)を奉ります
- 祝詞奏上
(のりとそうじょう) - 樹木清祓
(じゅもくきよはらい)
大麻(おおぬさ)で樹をお祓いし、重ねてお清めの切麻(きりぬさ)を木の四隅に撒いて手を合わせます - 玉串拝礼
(たまぐしはいれい)
参列者と共に神様に玉串を奉り、拝礼します
- 祓詞奏上
- 11:00
-
片付け
※仮に9:00を起点としています。祭典の細かい所作は省略しています。
所要時間としては2~3時間を予定しておくとよいということですね!
お供え物など、当日までに依頼主側で用意する物はあるのでしょうか。
祭壇や祭器具、お供え物(野菜など)などは全て神社で用意出来るため、ご依頼主様に準備していただく物は特にありません。
強いていえば、木を伐採するのがどのような場所かわかる写真を事前にいただけると大変助かります。
また、祭典をする場所を整えていただけると当日スムーズにお祓いをおこなえます。
準備から片付けまでお任せできるのは安心ですね!
では、依頼する場合はどのくらい前に申し込むのがいいのでしょうか。また、暦や日取りで気をつけたほうがよいことがあれば教えてください。
準備や神職の勤務その他の執務との兼ね合いがありますので、最低でも10日くらい前のお申込みが望ましいです。
日取りはいつでも構いませんが、気になる方は暦で六曜や十二直、二十八宿を見て決めるとよいでしょう。
それよりも気にしたいのは時間です。神社に詣でたり神祭をするのは午前中がよい、ということは基本で覚えておいてほしいです。
午前中がよいとされている理由には、太陽が昇っていくように願い事も成就しやすくなるといった言い伝えや、夕方以降は「陰の気」が高まる穢れの時間帯とされているほか、神社の参拝可能時間の関係で駆け込みでお参りすることになり望ましくない、など様々な理由があるようです。
朝の清々しい時間帯に気持ちよく神様をお迎えして、感謝と願いを伝えられるのが理想ですね。
樹木伐採清祓を迷われている方へ
最後に、樹木伐採清祓を検討されている方に向けて、よくある悩みや過去のご依頼主様のエピソードをお聞きしました。
ご依頼主様の声
樹木伐採清祓の依頼主様の傾向や、よくあるお悩みはありますか。
依頼主様は、施主個人様と伐採を依頼された業者様、2パターンのご依頼があります。
施主個人様の傾向としては、樹木伐採は必要なこととわかっていても心の整理が付かないなど、最後まで悩まれている方が多いです。
それと同時に、そのような方が樹木伐採清祓をすることで、改めて樹木と向き合い心の整理を付けられたとのお声も多くいただきます。
伐採を依頼された業者様でも「これで前向きに仕事に取り組める」「安全を祈願して安心した」とのお声が多いです。
実際にあった例で言うと、公園の工事で多数の樹木を伐採することを請け負った土木工事会社の方が、「立派に育ったたくさんの樹を切って近隣の住民の方々に愛された環境を変えることに個人的には割り切れない心情があったけれど、これで工事中に近くを通る住民の方々に顔向けできる気がする」とおっしゃっていました。
お祓いの際は、依頼主様に祭具を携えていただくお手伝いをお願いしています。参列されるだけではなくより一層心を込めることができ好評のようです。
依頼を検討されている方へのメッセージ
樹木には木霊が宿るとされています。少しでも心に引っ掛かりがあれば、神事をされたほうがよいと思います。もし何か障りがあっても、伐採後ではまさに後の祭りです。
今まで見守ってきてくれた木の神様に感謝をし、木も私たち人間と共に生きるいきものであるという、慈しみの心を持って考えていただければと思います。