「羽音とネズミみたいな鳴き声……もしかしてコウモリ?」
民家によく住み着くのはアブラコウモリです。
アブラコウモリは日没後に活動するため、この時間に羽音や鳴き声がよく聞こえるならアブラコウモリが住み着いている可能性が高いでしょう。
とはいえ
「夕方頃に飛んでいる姿を見たことがある程度で、よくは知らない」
「アブラコウモリが菌やダニを持っていないか不安……」
という方がほとんどでしょう。
アブラコウモリは昆虫を食べる益獣ですが、反面民家に住み着くとフン尿をまき散らす困った存在です。
もしアブラコウモリが住み着いているとわかったら、早めに対処しましょう。
この記事では、アブラコウモリの生態や住み着いたら何が起きるかを解説します。
記事の概要は以下のとおりです。
この記事はアブラコウモリの生態から駆除方法まで、アブラコウモリに関する情報をぎゅっと集めています。
この記事を読むだけで今後コウモリをどうすればよいかがすぐにわかるため、もしコウモリが不安ならぜひ参考にしてください。
まずはアブラコウモリの生態から見ていきましょう。
民家に住み着くアブラコウモリの生態
大きさ | 約5cm |
見た目 | 灰色、オリーブ色の毛並み |
分布 | 離島を除くほぼ全国 |
住処 | 屋根裏、洞窟や橋の下 |
活動時期 | 春から秋(冬は冬眠) |
エサ | 昆虫 |
参考: 国立環境研究所 侵入生物DB|アブラコウモリ(最終閲覧日:2024年4月3日)
アブラコウモリは民家に住み着くため、イエコウモリとも呼ばれています。
アブラコウモリは蚊や蛾(ガ)といった不快害虫を食べるため、益獣として有名です。
さらにコウモリは超音波を発していますが、アブラコウモリの超音波を聞いた蛾は農作物に近づかず被害が減ったという実験データもあります。
参考:中野 亮|蛾はコウモリの超音波を嫌がる(最終閲覧日:2024年4月3日)
ただしアブラコウモリが民家に住み着くと、鳴き声やフン尿の被害を出すため厄介です。
もし「これってアブラコウモリ?」と不安になったら、以下のアブラコウモリの生態を確認しましょう。
- 活動時間は春~秋の日没後
- 鳴き声は「キキキッ」
- 暗く静かな場所に住み着く
- フンには昆虫しか含まれていない
もし活動時間に鳴き声が聞こえたり、昆虫が多いフンを見つけたりしたら、アブラコウモリの可能性が高いでしょう。
ではアブラコウモリの生態を詳しく解説します。
活動時間は春~秋の日没後
アブラコウモリの活動時間は春〜秋の日没後です。
アブラコウモリの1年間はざっくり以下のとおりです。
春:冬眠から目覚める時期
夏:子供を産み育てるため活発に活動する時期
秋:交尾の時期
冬:気温15℃以下になると冬眠を始める時期
参考:横浜国立大学学術情報リポジトリ|横浜国立大学構内におけるアブラコウモリPipistrellus abramus(翼手目ヒナコウモリ科)の日周活動の季節変化及び冬眠開始時期について(最終閲覧日:2024年4月3日)
アブラコウモリが飛び回るのはおもに日没後ですが、春と夏は日の出前にも飛び回って狩りをしています。
日が長くなり始めた頃に羽音が聞こえるようになったら、アブラコウモリの可能性があるでしょう。
鳴き声は「キキキッ」
アブラコウモリの鳴き声は甲高い「キキキ」や「チチチ」といった声です。
鳴き声が聞こえる時間は、活動を始める日没後や夜明け前が多いです。
暗く静かな場所に住み着く
アブラコウモリは暗く静かな場所に住み着きます。
具体的には、民家を含めて以下のような場所に住み着きます。
- 屋根裏
- 戸袋(雨戸が入っている場所)
- 換気口、換気ダクトの中
- 物置
- 橋の下
- 洞窟の中
野生動物は森の中や自然の多い田舎に多くいるイメージですが、アブラコウモリは都会でも生活しています。
アブラコウモリは一部の離島を除きほぼ日本全国に分布しているため、どこにでもいると思いましょう。
フンには昆虫しか含まれていない
アブラコウモリのエサは昆虫で、フンには昆虫しか含まれていません。
アブラコウモリのフンは以下のとおりです。
大きさ:5~10mm
特徴:パサパサしている、ねじれている
アブラコウモリのエサは昆虫で、それ以外のものは食べません。
後半で詳しく解説しますが、民家に住み着くネズミやイタチといった動物は雑食性が多くフンには植物や人間の食べ物がよく含まれています。
もし昆虫の足や羽が多く含まれるフンを発見した場合、アブラコウモリである可能性が高いでしょう。
コウモリのフンにはばい菌が含まれている可能性が高いです。
カビが生えている場合もあり、吸い込んだり素手で触ったりすると危険です。
フンを調べる際には、使い捨ての手袋とマスクを着用してください。
もしご自宅で鳴き声を聞いたり、昆虫の多いフンを見つけた場合は、アブラコウモリが住み着いていると考えられます。
アブラコウモリは放置すると建物や健康に被害を出すため、できるだけ早く追い出し作業をおこないましょう。
次の章で被害について解説します。
アブラコウモリがもたらす被害
アブラコウモリは建物への被害と健康への被害を引き起こします。
もし家に住み着いてしまったら、できるだけ早く追い出しましょう。
ではアブラコウモリが引き起こす被害を解説します。
フン尿による建物被害
アブラコウモリのフン尿により、建物が汚れたり壊れたりします。
例えば以下のとおりです。
- 天井板にフン尿によるシミがあらわれる
- 家の中がなんとなく獣臭い
- フン尿にカビが生えてカビ臭い
アブラコウモリは小さな体のわりによく食べ、一晩で300匹の虫を食べるといわれています。
そうなるとフンの量も多くなりますが、厄介なことにコウモリは数十匹程度の群れで生活しています。
数十匹のコウモリが一晩でたくさんのフンをするため、住み着かれると大量のフンに悩むことになるでしょう。
菌や病気による健康被害
アブラコウモリは病気やノミなどの寄生虫を持っている可能性があり、近くにいると健康被害にあうおそれがあります。
アブラコウモリが起こす健康被害は以下のとおりです。
- レプトスピラ症
-
動物のフン尿に含まれる細菌によって起こる病気。
動物の多くが原因になる細菌を保菌しており、コウモリのフン尿から感染する可能性がある。
レプトスピラ症になると発熱や腹痛などの症状が出る。参考:国立感染症研究所ホームページ|レプトスピラ症(最終閲覧日:2024年4月3日)
- ダニやノミの寄生虫
-
野生動物には吸血性のダニやノミが寄生していることがある。
ダニやノミに寄生されると体に強いかゆみをともなう虫刺されが出る。
またダニなどの死骸やフンを吸い込み、アレルギー症状が出る場合もある。 - 心理的な負荷がかかり、体調不良になる
-
鳴き声や羽音で眠れない、フン尿による悪臭で不快な気持ちになるおそれがある。
人によっては強いストレスを感じる。
アブラコウモリなどの野生動物はばい菌や寄生虫を持っている可能性があるため、近づくだけでも危険です。
次の章でも触れますが、素手で触るのはやめましょう。
アブラコウモリが起こす被害について簡単にまとめました。
次はアブラコウモリを見つけた際に、やってはいけないことを見ていきましょう。
アブラコウモリにやってはいけない3つのこと
アブラコウモリを見つけてもやってはいけないことがあります。
それは以下のとおりです。
- 許可なく捕獲・殺傷する
- 素手で触る
- 被害を放置する
上記をおこなうとケガや病気のおそれがあります。
アブラコウモリを見つけても、触らずそっとその場から離れてください。
では理由を解説します。
許可なく捕獲・殺傷する
多くの野生動物は法律によって許可なく捕獲・殺傷することが禁止されています。
アブラコウモリも同じく捕獲や殺傷が禁止されているため、やめましょう。
野生動物は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(以下、鳥獣保護管理法)」で守られています。
この法律を簡単にまとめると「野生動物の保護や管理、狩猟の適正化を通して、生態系を保護のうえで地域社会の健全な発展などをおこなおう」というものです。
アブラコウモリも鳥獣保護管理法の対象のため、許可なくアブラコウモリを捕まえると処罰の対象になるおそれがあります。
もしアブラコウモリを捕獲する場合は、市役所など自治体に相談し捕獲の許可を得なくてはなりません。
のちほど解説しますが、コウモリを追い出すだけなら自治体からの許可はいらないため捕まえるのはやめましょう。
鳥獣保護管理法はこちらの記事でより詳しく解説しています。
気になる方はこちらもご確認ください。
素手で触る
アブラコウモリなどの野生動物は素手で触らないでください。
野生動物は病原菌を持っていることがあり、噛まれたり引っかかれたりすると病気になるおそれがあります。
またダニやノミなどの寄生虫がいることもあり、触るだけでもダニなどに寄生されるおそれがあります。
もし見つけても素手では触らず、そっと離れましょう。
万が一アブラコウモリが室内に入ってきた場合は、網などを使って素手で触らないように外に逃がしたのち、エタノールで掃除してください。
被害を放置する
アブラコウモリが住み着いたら、早めに追い出し作業をおこないましょう。
野生動物は一度住み着くとなかなか出ていきません。
そこが安全でエサが多く繁殖に適していると学習したためです。
また環境が変わらないと、別の群れが住み着くおそれもあります。
放置を続けると前述の悪臭やダニの被害が出るため、できるだけ早く対策しましょう。
ではアブラコウモリをどうすればよいか、次の章で解説します。
アブラコウモリの駆除は追い出しが一番楽
アブラコウモリは自分で追い出しましょう。
アブラコウモリを自分で捕まえたり、殺傷したりするには自治体の許可が必要です。
しかし自分の家に住み着いたアブラコウモリを追い出すだけなら、許可を取らなくてもすぐにおこなえます。
具体的な手順は以下のとおりです。
- 侵入口を特定する
- コウモリを追い出す
- 巣の清掃と消毒をする
- 侵入口を塞ぐ
コウモリの追い出しには、市販のコウモリ用スプレーや忌避剤を使います。
コウモリ用のスプレーはインターネット通販で購入できるため、用意しておきましょう。
こちらの記事にはコウモリ駆除の詳しい手順や注意点が記載されています。
気になる方はこちらをご確認ください。
アブラコウモリを追い出したあとは予防が必要です。
予防について次で解説します。
アブラコウモリの予防方法
アブラコウモリの予防は、入口をふさぎ、忌避剤でコウモリを寄せ付けないことです。
例えば換気扇からコウモリが侵入していたなら、換気扇に金網を取り付けましょう。
倉庫などふさぐのがむずかしい場所は、忌避剤を置いたりスプレーを散布したりも有効です。
ただし忌避剤の効果は一時的です。
必ず入口をふさぎ、定期的に忌避剤を散布しましょう。
コウモリよけといえば超音波発生器が有名ですが、こちらも効果は一時的といわれています。
理由を少し詳しく解説します。
超音波など害獣よけグッズは一時的
超音波発生器はコウモリの嫌がる音を発生させて、コウモリを追い払うものです。
ただ超音波発生器の効果は一時的で、永続的な予防はむずかしいでしょう。
超音波発生器に限らず、忌避剤などの害獣よけの商品に動物を殺傷する効果はありません。
そのため「嫌な音や匂いでも慣れてしまえばコウモリがいつく」場合があります。
同じコウモリ対策グッズを使い続けず侵入防止をしたり、忌避グッズをこまめに変えたりなど工夫しましょう。
これでアブラコウモリを自分で追い出す方法・予防する方法の解説が終わりました。
ここまで説明しましたが、コウモリの追い出しはかなり大変ですね。
そこで次からは、他の人にコウモリ駆除を頼んだ場合の詳細を解説します。
まずは自治体からです。
自治体ではコウモリ駆除はおこなっていない
ほとんどの自治体ではコウモリ駆除をおこなっていません。
アブラコウモリの駆除は害獣駆除の業者に相談しましょう。
自治体では農作物を荒らしたり、人を襲ったり市民生活に被害を出す動物に対して駆除の補助金や報奨金を出している地域があります。
しかしコウモリは大きな被害を出す動物ではないため、ほとんどの自治体ではコウモリの駆除はおこなっていません。
ただし自治体に相談すると地元の害獣駆除の業者を紹介してくれる場合もあるため、業者に心当たりがない場合は相談してみるのもよいでしょう。
では「害獣駆除業者に依頼したらいくらになるのか?」気になりますよね。
次の章で詳しく解説します。
コウモリの駆除費用は約3~6万円
コウモリの駆除費用は、依頼する業者や被害の状況によって金額が異なります。
そこで今回は一例として、害獣駆除110番の加盟店がおこなった駆除費用をご紹介します。
費用は約3〜6万円の方が多い結果となりました。
3〜6万円の方が多いですが、6万円以上の方もいますね。
アブラコウモリは追い払って終わりではなく、清掃や侵入防止の工事も必要になるからです。
「長年被害を放置して清掃が大変、広い範囲に侵入防止工事が必要だ」となると、費用がかさむ傾向にあります。
コウモリ駆除の費用相場や、費用を抑える方法の詳細はこちらの記事をご覧ください。
アブラコウモリの被害に気が付いたら、できるだけ早くコウモリ駆除をおこないましょう。
基本的に害獣駆除業者は作業をおこなう前に、見積りをお客様に提出します。
「金額がかさみそうで不安」という方は、複数の業者に見積りをとり金額を確認したのち、気に入った業者に依頼するとよいでしょう。
もし害獣駆除の業者をお探しなら、害獣駆除110番にご連絡ください。
害獣駆除110番は、害獣駆除業者をご提案する事業をおこなっています。
お電話1本で、あなたの希望する日時や場所に合わせた業者をご紹介いたします。
害獣駆除110番では基本無料※の見積りをおこなっているため、ご自宅のアブラコウモリの駆除費用が知りたい方はお気軽にお電話ください。
※対応エリア・加盟店により記載価格や条件で対応できない場合や、事前にお客様にご確認したうえで調査・見積りに費用をいただく場合がございます。
※1 対応エリア・加盟店・現場状況等により記載内容の通りには対応できない場合がございます。※2 手数料がかかる場合がございます。一部加盟店・エリアによりカードが使えない場合がございます。
アブラコウモリに関するよくある誤解
最後にアブラコウモリに関する情報を3つお伝えします。
- 農作物は荒らさない
- 屋根裏に住み着いても昆虫以外を食べない
- アブラコウモリの飼育は原則禁止
覚えておくと駆除の際に少し役立つため、気になる方はぜひ参考にしてください。
農作物は荒らさない
農作物に被害を出すコウモリは、オガサワラオオコウモリやクビワオオコウモリの可能性が高いです。
- オガサワラオオコウモリ
-
東京都の小笠原諸島父島に生息するコウモリ。
農作物の葉、花や果実を食べる被害を出す。
林をねぐらとしている。 - クビワオオコウモリ
-
沖縄県の琉球諸島に生息するコウモリ。
農作物の果実や花を食べる被害を出す。
木をねぐらとしている。
アブラコウモリは畑の周りを飛び回っているため、農作物に被害を出すと勘違いされる方がたまにいます。
しかしアブラコウモリは農作物を食べないため、上記2匹の可能性が高いでしょう。
また農作物の被害は次の項目で紹介する動物の可能性もあるため、そちらもご確認ください。
屋根裏に住み着いても昆虫以外を食べない
アブラコウモリは屋根裏に住み着きますが、人間の食べ物は食べません。
もし農作物やキッチンの食べ物、生ゴミやペットのエサなどに被害があれば別の動物が住み着いている可能性があります。
害獣駆除業者に一度調査を依頼しましょう。
アブラコウモリ以外に民家に住み着く動物の一例は以下のとおりです。
- ネズミ
- イタチ
- アライグマ
- ハクビシン
上記の動物はすべて雑食性で、肉、昆虫から植物まで何でも食べます。
特にネズミとイタチはフンの大きさや鳴き声が似ているため、アブラコウモリと誤認されやすいでしょう。
もし農作物が荒らされた、生ゴミやペットのエサを食べられたなどの被害があったら、上記の動物を疑いましょう。
関連記事では屋根裏に住み着く動物を解説しています。
心当たりがある方は、こちらの記事もご確認ください。
アブラコウモリの飼育は原則禁止
アブラコウモリの飼育は原則禁止されています。
アブラコウモリはかわいい見た目をしているため、ケガをしていたり赤ちゃんのコウモリを見つけたりするとつい保護したくなるかもしれません。
しかし、先ほど解説した鳥獣保護管理法には飼育に関する規定もあり、「行政の許可を受けたうえで飼養登録の申請をしなければならないもの」とされています。
飼育をするにあたっては、その鳥獣を保護する目的などの理由が必要となり、そのうえでの行政による許可があることが前提となります。
もし問題を抱えたアブラコウモリを見つけたら、自治体ががアドバイスをくれる場合もあるためそちらに連絡しましょう。
参考:茨城県|けがをした野生鳥獣を見つけたら(最終閲覧日:2024年4月9日)
まとめ
アブラコウモリの生態から追い出し方法まで解説しました。
簡単に記事をおさらいすると以下のとおりです。
- アブラコウモリは昆虫しか食べない益獣
- 家に住み着いた場合はフン尿をばらまくため、追い出しが必要
- 害獣駆除業者に依頼した際の費用は約3~6万円
アブラコウモリの被害に気が付いたら早めに対処しましょう。
早めに業者に連絡すれば清掃費なども安く、建物への被害も浅く済むことが多いためです。
「もしかしてコウモリかな?」と思ったら、早めに行動をおこしましょう。