「近所でハクビシンが増えているってニュースがあるけど、何が問題なの?」
ハクビシンの名前をよく聞くけれど、実際どんな動物なのかわからなくて不安に思っていませんか?
ハクビシンは人やペットに被害をもたらす厄介な害獣です。
人前に姿を見せないので発見が遅れ、気がついたときには大惨事になっていることがあります。
しかしハクビシンの習性や行動パターンをよく知り、適切な対策をしておけば被害を未然に防げます。
この記事では、ハクビシンがどんな動物かわからず不安に思っている方に向けて、生態や特徴をくわしく解説していきます。
- ハクビシンの見た目は顔と尻尾に特徴がある
- ハクビシンは木登りや綱渡りが得意
- ハクビシンは雑食性で特に甘いもの好き
- ハクビシンは農作物やペット・家畜を襲う
ハクビシンの生態や特徴を詳しく知って対策に生かしてくださいね。
ハクビシンの生態
ハクビシンはタヌキやアライグマ、アナグマなど似たような中型の野生動物と間違えられやすいです。
それは、ハクビシンの姿や生態がよく知られていないからかもしれません。
じつはハクビシンは独特の性質を持っているので、他の動物と見分けるのは簡単です。
また生態を詳しく知っておくと、痕跡からハクビシンの存在を判別しやすくなります。
ハクビシンの姿と見分け方
ハクビシンは食肉目ジャコウネコ科に属しています。
姿や見た目の特徴を詳しく見ていきましょう。
ハクビシンを簡単に見分ける方法は、顔の模様を見ることです。
白鼻芯(はくびしん)の名前のとおり、額から鼻まで白い筋模様があります。
その他、目の下や耳元に白いまだら模様もあります。
体全体は灰色をしていますが、手足は黒色です。
また、ハクビシンの尻尾は長いです。
成獣の体の長さは頭から尻尾の先までが1mくらいで、そのうち4割以上を尻尾が占めます。
タヌキとアナグマは尻尾が短く、アライグマの尻尾はふっさりして縞模様になっているのが特徴です。
暗闇や離れた場所から見かけたときは、尻尾でハクビシンかどうか見当をつけるのがよいでしょう。
ハクビシンと他の動物の見分け方はこちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
ハクビシンの生息地と住処
日本では沖縄以外のほぼ全域に生息しています。
特に、宮城・福島から中部地方にかけてと、四国で生息が多く確認されています。
ハクビシンは自然の多い山間部から人が行き交う市街地まで幅広く生息しています。
参考:国立環境研究所 新入生物データベース|ハクビシン(最終閲覧日:2024年1月30日)
ハクビシンはもともと日本にいなかった動物です。
ハクビシンが日本に持ち込まれた経緯は諸説あり、毛皮用として持ち込まれたものが野生化したという説が有力ですが、経緯ははっきりとはわかりません。
ハクビシンは木の上で生活しますが、人の家や建物にも住み着きます。
神社仏閣の屋根裏や廃屋、倉庫、集会所を休息場所とすることが多いです。
近年ではハクビシンが都会でも見られるようになってきました。
ハクビシンが都心部でも見られるようになった原因として、以下の説があります。
- 都会は天敵が少なく、さらにハクビシンが雑食性で適応力も高かったため
- 人間が捨てたゴミが豊富な餌になるため
- 人間に襲われた経験が少なく、人間を怖がらなくなったため
ハクビシンの習性と行動パターン
ハクビシンには次のような習性や性質があります。
- 行動
-
夜行性
- 性格
-
臆病
- 食べ物
-
雑食性
- 好物
-
果樹など甘いもの
- 排泄
-
ためフン
ハクビシンは夜行性なので、昼間に明るいところで見かけることは少ないです。
また臆病な性格なので、めったに人前に出てくることはありません。
そんなハクビシンが人里や市街地へやってくるのは、食べ物を得るためです。
作物のある農地やゴミ捨て場など、餌が安定して得られる場所近くで人気のない場所に住み着きます。
ハクビシンは雑食性で、農作物から小動物や昆虫まで何でも食べます。
特に甘いものが好みで、木に登って果樹を食い荒らすことが多いです。
ハクビシンは餌を求めて穴を掘ることはしません。
土の中の食べ物が好きなのは、アナグマ、タヌキ、イノシシです。
その他、ハクビシンは同じ場所で排泄する「ためフン」の習性があります。
フンの場所を決めるおもな目的はマーキングで、自分の存在や餌場の情報を伝える役割があります。
ハクビシンのフンやフン被害の詳細はこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
ハクビシンの身体能力
ハクビシンの身体能力はとても高く、木登りや綱渡りが得意です。
足裏に吸盤のようなパッドがついていて、爪のかからない雨どいも器用に登ります。
そして木から降りるときは頭から降りてきます。
人やタヌキなど、木登りが苦手なものが足から降りるのとは対照的です。
ハクビシンは細い枝や電線を渡ることも可能です。
長い尻尾を繊細に使ってバランスを取り、直径1㎜以下の細い針金の上も歩行できることがわかっています。
さらに高い跳躍能力もあり、1mほどの高さの障害物はよじ登ったりジャンプしたりして乗り越えます。
参考文献:江口 祐輔.農作物を守る鳥獣害対策.誠文堂新光社,2018
ハクビシンの繁殖能力
ハクビシンは年に1度、時期は夏から秋にかけて出産することが多いです。
1度の出産で2~3匹の子どもを生みます。
また生後10ヵ月以降に出産できます。
参考:農林水産省|ハクビシンの基礎知識(最終閲覧日:2024年2月5日)
動物園など人の手で飼育されているハクビシンは20年以上生きることもありますが、野生では7~10年ほどだと考えられています。
参考:いなべ市:ハクビシン、アナグマの生態と対策(最終閲覧日:2024年2月5日)
ハクビシンをペットにするのが難しい理由
これまでハクビシンの生態や特徴をご紹介しました。
「臆病な性格なら、かわいいしペットとして飼えるかも?」と思う方もいらっしゃることでしょう。
しかしハクビシンをペットとして飼うのは難しいのでおすすめしません。
そのおもな理由は以下の3つです。
ハクビシンは勝手に飼育できない
ハクビシンを飼育するには自治体等による行政の許可が必要となります。
その許可にあたっては、学術研究の目的や、その鳥獣保護の目的など特定の理由が認められた場合に許可されるものとなります。
また、ハクビシンは農作物や人に被害を与えるため、自治体等の捕獲等の許可の申請のうえで、捕獲等をすることができる対象でもあるのです。
ハクビシンはペットとして販売されていない
ハクビシンはペットとして販売されていません。
そのため野生のハクビシンを捕獲して飼おうとする方もいらっしゃるでしょう。
しかし野生鳥獣への接し方として、むやみにエサを与えたり保護したりするのはよくありません。
ハクビシンを一時的に保護し、専門的知識のないまま餌付けをしてしまうと、自然に戻すのが困難です。
野生鳥獣は、厳しい自然の中で自ら餌を探して生活しています。そのため、むやみやたらに人が保護したり餌を与える必要はありません。野生鳥獣が生息できる豊かな自然環境を守り、あたたかい目で静かに見守りましょう。
出典:東京都環境局|野生鳥獣との接し方について(最終閲覧日:2024年2月8日)
ハクビシンは飼育しづらい
ハクビシンは臆病な性格ですが、危険を感じれば人や他の動物に対して威嚇するケースもあります。
野生動物なので人間になつきにくく、病原菌を持っているおそれがあります。
その他、ハクビシンは高い場所で尿やフンをする習性があり、フンの始末は大変です。
これらのことから、ハクビシンを飼うのは犬や猫を飼うより難しいでしょう。
野生のハクビシンによる被害
ハクビシンをペットとして飼うのは難しい理由を解説してきました。
なかには「野生のハクビシンは駆除する必要があるの?」と疑問を持つ方もいらっしゃることでしょう。
ここからは、野生のハクビシンが人間にもたらす被害についてご紹介します。
農作物や果樹を食い荒らす
ハクビシンは雑食性で、野菜や果物などの農作物を食い荒らす被害は毎年多く出ています。
参考:農林水産省|野生鳥獣による農作物被害の推移(鳥獣種類別)(最終閲覧日:2024年2月1日)
狙われる農作物はモモやミカン、トウモロコシやジャガイモなどさまざまです。
ほとんどの果実や野菜を食べるため、どのような農作物であっても被害に遭う可能性はあります。
2008年4月~6月に日本家畜管理学会および応用動物行動学会がおこなった実験によると、育てたサクランボの約2割が食害に遭いました。
参考:J-STAGE|山形県高畠町におけるハクビシンからのサクランボ食害防護(1)(最終閲覧日:2024年1月30日)
ハクビシンの食痕には特徴があり、他の動物との見分けはつきやすいです。
ハクビシンは身軽なため、果実を食べるために高所に登っても枝先が折れたり幹に爪痕を残したりしません。
また果樹にかけてある袋を口で破ったり、皮のあるものは下に吐き出したりします。
ブドウやミニトマト、ギンナンなど、皮を落としてあったらハクビシンの仕業かもしれません。
タヌキは木登りが苦手なので下の方にあるものを食べますし、ハクビシンと同じく木登りが得意なアライグマはブドウを皮ごと食べる特徴があります。
建物内に侵入して住み着く
ハクビシンは、人気のない屋根裏などに侵入して住み着くことがあり、特に厄介なのがフンによる被害です。
上述したように、ハクビシンは決まった場所にためフンをします。
人気のない高所に排泄するため発見が遅れやすく、気付いたときにはフンがこんもりたまっていることもあります。
異臭だけでなく、虫が湧いたりジミになったりするので注意しましょう。
また、ハクビシンの鳴き声が騒音になることもあります。
ハクビシンの鳴き声は状況によって変わります。
実際の鳴き声はこちらの記事で視聴できるので、確かめてみてください。
ペットや家畜を襲う
ハクビシンは、ペットや家畜にとって天敵となることがあるため注意しましょう。
雑食性なので、昆虫類やウサギ、ニワトリなどの家畜を襲って捕食するケースがあります。
また犬や猫のようなペットとは、餌をめぐって喧嘩になることがあります。
喧嘩の勝敗は体の大きさや年齢などで決まるため、ペットにとっては脅威となるでしょう。
ハクビシン被害の詳細はこちらの記事をご覧ください。
ハクビシンの侵入を防ぐ対策
ハクビシンの性格は穏やかでおとなしいものの、人間に与える被害はきわめて深刻です。
「自分で駆除してしまおう」と考える人もいるかもしれませんが、ハクビシンは鳥獣保護管理法で守られているので無許可で捕獲や殺傷ができないのです。
しかし、追い出す意味での駆除や対策は可能です。
ここからは、ハクビシンの生態にあわせた侵入対策をご紹介します。
住宅への侵入経路をふさぐ
まずはハクビシンの侵入経路を確認してふさぎましょう。
ハクビシンの侵入経路は、おもに屋根下からと床下からの2パターンです。
ハクビシンはスマートフォンサイズの隙間から侵入できるため、小さな隙間はすべて金網でふさぐのがコツです。
家屋にある隙間は通風目的であることが多いので、板でふさがないようにしてください。
金網はなるべく目の細かいものを選びましょう。
網目が細かいとハクビシンに侵入できなさそうだと思わせることができます。
ハクビシンを寄せ付けない環境対策
ハクビシンを寄せ付けない環境対策も必要です。
特に重要なのが餌を置かないことです。
野菜や果物の皮、食事の残り物などの生ごみはそのままにせず、袋に入れて口をしっかり縛り、すぐに捨てましょう。
また、犬や猫などペットのエサも、外に放置せず片付けておくと安心です。
庭や畑で家庭菜園をしている場合は、ハクビシンの好む果物や野菜の実をいつまでも残しておいてはいけません。
実が熟したらすぐにすべて収穫し、取り残さないようにしてください。
また、ハクビシンの嫌がる忌避剤を利用する方法もあります。
ハクビシンはニンニク、トウガラシ、木酢液、オオカミの尿、石油系の匂いなどを嫌がるとされています。
それらの匂いの忌避剤をハクビシンの侵入口になりそうな場所に設置します。
ただしペットを飼っている場合、忌避剤は犬や猫にとっても嫌な匂いなので、ペットの近くには置かないようにしてください。
ハクビシンの忌避剤に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
電気柵を使った対策
作物を育てている畑や果樹園には電気柵を使った対策も効果的です。
電気柵とは、動物に軽い電気ショックを与えて脅かし柵の中へ入らないようにするものです。
ハクビシンは電気ショックに弱い性質があるため、電気柵は効果があります。
通常、動物の鼻先など感電しやすい部分が触れる高さに柵線を設置します。
ハクビシンの場合は、地面からの高さが5cmと10cmの位置に設置するとよいです。
地面近くに柵線を設置しにくいときは、ハクビシンの「登る」性質を利用して登った先で通電させる方法もあります。
参考:埼玉県|ハクビシン、アライグマ被害防止柵埼玉方式白落くん設置マニュアル(最終閲覧日:2024年2月5日)
有刺鉄線を使った対策
侵入されたくないエリアには、有刺鉄線を使う方法もあります。
有刺鉄線とは鉄板に鋭いトゲがついているものです。
ハクビシンは木に登るのが得意なため、果物の木や庭木など、登られたら困る場所に有刺鉄線を巻きます。
有刺鉄線は、巻いたら針金で簡単に固定でき、メンテナンスをしなくても効果は4年ほど持続します。
有刺鉄線はハクビシンの他にもサルやアライグマにも効果的です。
実を収穫する時期に使うことで、ハクビシンやその他の害獣による食害を防ぐことができます。
ハクビシン駆除と、その後の侵入対策の詳しい方法はこちらの記事をご覧ください。
ハクビシン駆除は業者に任せよう
「屋根裏にいるのはハクビシンに違いない!」
そんなときには、自力で対処しようとせず害獣駆除業者へ依頼しましょう。
許可なくハクビシンを捕獲・殺傷することは禁じられているためです。
ハクビシンの性格は臆病で、繁殖力が強いためすぐに数が増えてしまいます。
高所に排泄物をため込む習性があるため、フンによる建物へのダメージや異臭による被害が大きいです。
また、ペットや家畜にとってハクビシンの侵入は脅威となるのではやめに駆除しましょう。
信頼できる害獣駆除業者の選び方
ハクビシンの駆除を業者へ頼みたくても、初めての業者選びは難しいものですね。
「どの業者に依頼すればいいの?」と迷っている人は、以下の選び方を参考にしてみてください。
- 資格を持っているか
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駆除に関わる資格を持っているかどうか確認しましょう。
狩猟免許を持っている業者は多いので、その他に「防除作業監督者」や「ペストコントロール技術者」などの資格の有無も参考になります。 - 動物の生態に精通している
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ハクビシンに精通している業者なら適切に駆除をしてくれます。
業者のWebサイトやブログ、口コミなどをチェックすると実績がわかるはずです。
なるべく、よい口コミの業者に依頼しましょう。 - 質問をしても詳しく答えてくれる
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電話口でも作業中でも、相談や質問を親身に答えてくれる業者はよい業者であることが多いです。
駆除業者に関して疑問に感じることがあれば、相談してみるのもいいでしょう。 - 関係のないサービスをすすめてこない
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必要な作業を確実におこなってもらえる業者を見極めましょう。
駆除業者には、見積りの段階では安く提示しておき、必要のないリフォームをすすめてくる場合があります。
そのようなときにリフォームをおこなってしまうと、結果的に高額になってきてしまいます。
害獣駆除業者の選び方の詳細はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
ハクビシンは似たような動物がたくさんいますが、独特の特徴があります。
ハクビシン対策をするには、以下の生態や特徴を理解しておきましょう。
- 雑食性で特に甘いものを好む
- 木登りや綱渡りが得意
- 臆病な性格で夜行性
- 家畜やペットを襲うことがある
- ためフンをする
- スマートフォンサイズの隙間から侵入する
- 神社や住宅の屋根裏に住み着く
家の近くでハクビシンの出没情報があったら侵入対策をしましょう。
また屋根裏などに住み着いてしまったら、被害が拡大しないうちに駆除をお考えください。