「何もしてないのに窓ガラスにヒビが入った」、「朝起きたら窓ガラスにヒビ割れが……」みたいに窓ガラスが突然ヒビ割れしたことに疑問を抱いていませんか?
そういったヒビ割れは「熱割れ」である可能性が高いです。
窓ガラスのヒビ割れに直面したときは、まず割れの発生原因を特定することが重要です。
熱割れであったときは特にです。
なぜなら、熱割れのしやすさは窓ガラスの周辺環境によって変わってくるためです。
熱割れしやすい状態で放置したままにすると、ガラス交換したにもかかわらず再発を繰り返してしまうこともあります。
また、熱割れだと特定できれば保険が適用できる場合もあるためです。
そこで、今回は窓ガラスの熱割れに関して次の通り詳しく解説をしていきます。
- 熱割れしたガラスの見分け方
- 窓ガラスが熱割れする原因
- 窓ガラスが熱割れしやすい5つの状態
- 窓ガラスの熱割れを予防する4つの対策
- 保険で自己負担額が減らせる
- 賃貸物件での対処方法
ガラスの割れが熱割れだということがわかれば、その後の対処の仕方も変わってきます。
こちらをお読みいただければ、熱割れかどうかを特定しやすくなり、再発を繰り返さないための予防策を見つけることができますので参考にしてみてください。
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自然と調和する木造りの建築を設計する、東京の一級建築士事務所「杉本龍彦建築設計」主宰。 過去にはコンペ杉コレクション2008でグランプリを受賞するなど、木の美しさを生かした木造住宅設計のスペシャリスト。 暑さ寒さ対策を考慮した窓やガラス面のデザインなど、自然の力を利用した快適かつ省エネな設計手法「パッシブデザイン」を得意とし、「建築断熱リノベーション」 や「窓がわかる本:設計のアイデア32」など、著作多数。2023年出版予定で単著執筆中。
熱割れした窓ガラスは割れ方で見分けられる
ガラスが熱割れしたかどうかは、熱割れの特徴を把握していると判別が容易になります。
熱割れしたときはガラスのエッジ部から直角に割れが始まることが特徴になります。
また、一本の亀裂から枝分かれするようにヒビ割れる特徴もあります。
一方で物をぶつけて衝撃を受けたときの割れ方は、衝撃が加わった部分を中心に放射状に割れます。
熱割れと衝撃割れ違い
■ 熱割れ
■ 衝撃割れ
熱割れの中には、以下の画像のように非分岐破壊と分岐破壊のパターンがあります。
非分岐破壊は亀裂が一本だけなのに対して、分岐破壊では亀裂の途中で複数に分岐した状態です。
どちらも熱割れの特徴的な割れ方になります。
窓ガラスが熱割れする理由は熱膨張
熱割れする箇所は温かい部分と冷たい部分の温度差のあるところで発生します。
その原因はガラスが熱膨張する特性を持っているためです。
窓に取り付けられた板ガラスが日射を受けた場合、中央部は早く温度が上昇します。一方、サッシにはめ込まれた周縁部(以下エッジ部という)は、日射を受けずサッシや躯体への放熱もあって温度上昇は遅くなり、板ガラスの中央部とエッジ部とでは温度差が生じ、中央部が膨張しようとするのに対してエッジ部は低温の状態で膨張しません。この結果エッジ部が中央部の熱膨張を拘束することとなり、エッジ部に引張応力が発生します。このようにして発生する熱応力(エッジ部の引張応力)が、そのガラス固有の強度をこえると板ガラスは破壊します。
出典:セントラル硝子「板ガラスの熱割れ強度」(最終閲覧日:2022年9月22日)
この現象 を「熱割れ」と呼んでいます。
この熱割れの説明をイメージしたものがこちらです。
こういった温度差ができる状態になりやすいのは、冬季の晴れた日の午前中です。
特に太陽日射による温度差が大きくなる建物の東面から南面にかけては、熱割れの発生頻度が高い方角となります。
冬季の午前中は窓ガラスとサッシにはめ込まれた周縁部に温度が生じやすいため、熱割れで窓ガラスにヒビが入ることが多くなるのです。
熱割れのメカニズムを時間軸で説明します。
- 夜間にガラスが冷やされる。
- 朝、太陽が出てガラスは日射を浴び、ガラス面の温度上昇が始まる。
このときサッシに飲み込まれている部分は、日射を浴びないため温度が上昇しない。 - 中央部のガラスは膨張しようとするのに対し、エッジ部が拘束されているため
ガラスが動けない状態となる。 - 中央部のガラスの膨張にエッジ部のガラスが耐えきれなくなり、割れが生じる。
窓ガラスが熱割れしやすい5つの状態
窓ガラスの周囲の状態によって熱割れが起こりやすくなります。
そこで次の通り5つの熱割れが起こりやすい状態を紹介します。
ご自身に当てはまる項目があれば、窓ガラスの周辺環境を見直し熱割れ予防をおすすめします。
- 網入りガラスになっている
- 窓ガラスにフィルムが貼ってある
- 窓ガラスにエアコンの風を直接あてる
- 窓ガラスが劣化している
- Low-Eガラスを使用している
網入りガラスになっている
網入りガラスとは、ガラスに金属網が封入されているため、窓ガラスの種類の中でも熱割れしやすいものになります。
なぜなら、内部に張り巡らされているワイヤーは、ガラスより熱膨張率が高い材料のためです。
さらに、ガラスに金属網を封入するため切断面に傷が付きやすく、許容応力度が一般の板ガラスの半分程度になっていることも熱割れ発生の一因となっています。
太陽の日が当たり熱を吸収したワイヤーは、ガラスより熱膨張率が大きいので、ガラス以上に膨張し伸びようとします。
その伸びにガラスの強度が耐えられなくなるとガラスにヒビが入ります。
このように熱膨張率がガラスとワイヤーで異なるため、網入りガラスでは熱割れが起こりやすくなります。
窓ガラスにフィルムが貼ってある
市販で売られている目隠しや断熱の目的で窓ガラスに貼り付ける窓用フィルムも熱割れしやすくなる要因になります。
こういったフィルムは窓ガラスから出入りする熱を逃げにくくする効果があるため、ガラスに熱がこもりやすくなります。
特に色付きや日射熱カット機能のあるフィルムは日射熱を吸収しやすいため、ガラスの熱膨張を促して、熱割れしやすくなります。
窓ガラスにエアコンの風を直接あてる
エアコンの室内機あるいは室外機が吹き出す風を窓ガラスに直接あてると、熱割れしやすくなります。
なぜなら、局所的な温度差が生じやすくなってしまうためです。
局所的な温度上昇の要因としては、ストーブの熱や強い照明、座布団が部分的に当たっている場合などもあります。
ガラスは熱くなると膨張し、冷たくなると収縮する性質があるため、温度差が生じる部分では伸びようとする力と、縮まろうとする力が反発し、ヒビ割れることがあります。
窓ガラスが劣化している
長年使っているとガラス表面には目に見えないほどの小さな傷やヒビが入ってきます。
そういった傷やヒビによりガラス強度が低下すると熱割れしやすくなります。
日々、熱による膨張と収縮で繰り返し受ける力に対して、ガラスの許容強度が下回ってしまうとガラスにヒビ割れが生じてしまいます。
そのため、ガラス強度も熱割れのしやすさに大きく影響してきます。
Low-Eガラスを使用している
近年使用が増えたLow-Eガラスは、ガラスの表面にLow-E膜といわれる特殊な金属面をコーティングしたもので、主に複層ガラスに用いられます。
この金属膜によって日射が抑えられるのですが、同時に一般の他ガラスより熱を吸収しやすいという特性を持っています。
そのため熱の応力が高くなる傾向があります。
窓ガラスの熱割れを予防する4つの対策
熱割れで窓ガラスが割れたときは、窓ガラス交換後にしっかりと熱割れ予防をすることが重要です。
なぜなら、同じ状態のまま使用し続けると、繰り返し熱割れで窓ガラスが割れる可能性があるからです。
今回は熱割れ予防として次の4つをご紹介します。
- 日陰を作る
- 温度が上昇する要因を窓から遠ざける
- 耐熱、強化ガラスに交換する
- Low-Eガラスの校正を変更する
日陰を作る
日陰を作る具体例として、シェードの活用があります。
太陽の日によるガラス表面の温度上昇をやわらげ、温度差を小さくできるため、熱割れの予防につながります。
取付時の注意点としてはシェードが窓ガラスに触れないようにすることです。
窓ガラスに覆いかぶせると、熱がこもり逆効果となってしまうため気を付けてください。
温度が上昇する要因を窓から遠ざける
エアコンの風によって局所的に窓ガラスの温度が上昇することも避けなければなりません。
エアコン(室内機)の種類にもよりますが、吹き出す風向きを任意に変えられるものがあります。
そういったエアコンであれば、窓ガラスに風が直接当たらないように調整することで熱割れ予防になります。
また、室外機に対しても風向きを変えられるアダプタを別売で準備しているメーカもあります。
そういった風向アダプタを用いて吹き出す風を窓ガラスから遠ざけることも効果的です。
エアコンは設置後だと、ご自身で移動させることはできません。
無理に動かすと、室内機と室外機に繋がっている配管が折れてエアコンが故障します。
そのため室内機や室外機の位置を見直したいときは専門のエアコン取付業者に必ず依頼するようにしてください。
耐熱、強化ガラスに交換する
熱割れしやすい網入りガラスをご使用されている場合は、耐熱、強化ガラスに交換するのも一つの選択肢です。
耐熱、強化ガラス、防火ガラスは網入りガラスのように防火、耐熱、強度に優れています。
そのため、網入りガラスの機能を損なわず、熱割れ予防をすることができます。
耐熱強化ガラス
メーカ | 日本板硝子株式会社 |
商品名 | パイロクリア |
種類 | 耐熱強化ガラス |
特徴 | 強度は一般的なフロートガラスの6倍 火災時でも防火ガラスとしての性能を発揮 |
引用:日本板硝子株式会社「パイロクリア(耐熱強化ガラス)」(最終閲覧日:2022年9月22日)
防火ガラス
メーカ | 電気硝子建材株式会社 |
商品名 | ファイアライト |
種類 | 防火ガラス |
特徴 | 熱膨張係数がほぼゼロ 火と水の対極に耐えられる 強度は一般的なフロートガラス同等 |
引用:電気硝子建材株式会社「ファイアライト)」(最終閲覧日:2022年9月22日)
Low-Eガラスの構成を変更する
一般的なLow-Eガラスは室外側に金属膜をコーティングしていますが、金属膜は日射熱を受けやすいです。
そこで内外を変更し、室内側にLow-Eガラスを設けることで熱応力の上昇を抑制できます。
ただし、防火サッシなどガラスの仕様を限定している商品には適応できないため注意が必要です。
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解説したように、ガラスの熱割れ原因次第で取るべき対策は異なります。
日射が原因であればシェード以外にも外側ブラインド取り付けや庇、屋根の軒を出すことです。
局所的な温度上昇が原因であれば、座布団以外にも置物やクッションが部分的に当たっていないか、確認するとよいです。
室内側カーテン、ブラインドによる熱たまりや、ガラス面に部分的な日陰が生ずる等の温度分布の偏りにも気をつけましょう。
太陽高度は季節によって向き、高さが変化します。
ガラス熱割れの原因と対策の判断が難しいと感じた場合は、気軽に専門家に問い合わせたほうがよいでしょう。
窓ガラスの熱割れは保険で自己負担額を減らせる
窓ガラスが熱割れしたときは火災保険の適用により自己負担額を減らせる場合があります。
窓ガラスの熱割れは自然現象であり「不測かつ突発的な事故」として扱われることが多いので、破損・汚損の補償プランに加入していれば、補償対象になる可能性があります。
- 東京海上日動火災保険
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- 補償プラン※1
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充実プラン
- 免責額※2
(自己負担額) -
- 2022年9月30日以前 保険始期契約
5千円 - 2022年10月1日以降 保険始期契約
5万円
- 損害保険ジャパン
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- 補償プラン※1
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ベーシックⅠ型
- 免責額※2
(自己負担額) -
- 2022年9月30日以前 保険始期契約
1万円 - 2022年10月1日以降 保険始期契約
5万円
- 2022年9月30日以前 保険始期契約
- 三井住友海上
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- 補償プラン※1
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フルサポートプラン
- 免責額※2
(自己負担額) -
- 2022年9月30日以前 保険始期契約
0円 - 2022年10月1日以降 保険始期契約
5万円
- 2022年9月30日以前 保険始期契約
※1:窓ガラスの熱割れの補償には「破損、汚損」の補償が含まれた補償プランに加入する必要があります。
※2:補償プランの中で免責額を最も低い金額で設定した場合になります。設定する金額によって免責額は変動します。
※3:2022年9月22日時点の内容になります。
今回は損害保険会社の大手3社で破損・汚損の補償プランを確認したところ、自己負担額は5万円以上でした。
自己負担額を超える金額を保険で補償してもらえます。
ガラス修理・交換にかかる費用は、弊社の施工実績では平均35,632円※4になります。
そのため仮にガラス修理・交換にかかる費用が35,632円だとすると、補償を受けるメリットがなくなってしまいます。
ただし、大きなガラスや特殊なサッシの場合はガラス交換費用が5万円以上となる場合もあります。
これから保険に加入する方は、ガラス交換費用5万円以上となる場合に補償を検討するとよいでしょう。
※4:ガラス修理・交換費用
集計期間:2019年1月~2021年12月(5,964件)
集計対象:弊社運営サイト全体におけるガラス修理・交換の施工実績
集計方法:対象の平均値を算出(※)し、小数点以下を四捨五入
※大規模な施工など特殊なケースを除く費用の平均値を算出するため、上下2.5%の施工費用を異常値として集計対象から除外しています。
保険会社の中には窓ガラスの熱割れを補償対象外としているところもあります。
また、保険会社の中には約款の適用範囲に「ガラスの性質によるひび割れは除く」と記載しているところもあり、そういった記載がある場合は窓ガラスの熱割れを補償対象外としている場合が多いです。
保険の適用範囲についてはご自身の加入されている保険内容をご確認するようにしてください。
賃貸物件で窓ガラスが熱割れしたときは貸主に報告
賃貸物件で窓ガラスが割れたときは、窓ガラスの修理、交換前に貸主に報告することが大切です。
通常使用の中で割れた窓ガラスは、貸主に修繕する責任があります。
窓ガラスの熱割れは通常使用の中で起きるものなので、熱割れは貸主負担で修理、交換をしてもらえます。
ただし、窓ガラスの割れが熱割れでないと判断された場合は、自己責任で費用負担するように言われることがあります。
ご自身の中では熱割れだと確信できても、貸主が納得されないようなときはガラス業者に立ち会ってもらい、ガラスの割れ原因を特定してもらうのがよいでしょう。
窓ガラスのひび割れ放置は危険!
少しのヒビ割れであっても、そのまま放置するのは危険なのでやめましょう。
ヒビが入っている状態というのは、ガラス強度としては非常に弱くなっている状態です。
始めは少しのヒビ割れであっても、熱によるガラスの膨張、収縮や、窓の開け閉めによる衝撃でヒビ割れ範囲は広がっていき、強度もどんどん弱くなっていきます。
強度が弱くなると、窓を開け閉めしているときにガラスが割れ落ちてしまったり、あるいは台風などの突風で窓が破壊する可能性もあり、大変危険な状態です。
そのため、窓ガラスがヒビ割れてしまったときはガラス修理、交換を行うようにしてください。
ガラス交換するなら「ガラス110番」にご相談ください
「ガラスにヒビ割れが発生した」「ガラスの交換がしたい」というときは「ガラス110番」をご利用ください。
ガラス110番は数多くの鍵業者と提携を結んでおり、ご相談に応じた最適な業者をすぐに手配して、ご紹介させていただきます。
24時間365日受付をしていますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
今回は窓ガラスの熱割れをご紹介しました。
この記事の特に重要な点をまとめましたので、改めてご確認ください。
- 熱割れは一本の亀裂から枝分かれするようにヒビ割れることが多い
- 熱割れの原因はガラスの温度差
- 熱膨張による力にガラスのエッジ部が耐えきれなくなると割れる
- 「熱割れしやすいガラスの使用、ガラス面の温度の偏り、・窓ガラスが劣化している」この状態では熱割れしやすい
- 熱割れ予防は熱膨張を防ぐのが重要
- 火災保険で高額なガラス修理の自己負担額を減らせる
- 賃貸物件での熱割れによるガラス修理費用は貸主負担
熱割れが起きてしまった場合、二度と起きないように対策することも重要ですが、まずはガラス修理が必要です。
「たかがヒビ割れ」と思われるかもしれませんが、そのままではガラスの強度が落ちたままですし、見栄えもよくありません。
割れた窓ガラスの交換は危険なので、ぜひガラス110番にご相談ください。
お近くの弊社加盟店に取り次ぎ、迅速丁寧にガラスを交換いたします。
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ある日突然ガラスが割れていれば、「いたずらされたのか」と誰しも身の危険を感じて不安になり、その部分を交換することに気を取られてしまうでしょう。しかし、お伝えしたようにガラスの割れ方や発生した時期、環境によって原因は様々です。原因が分からないまま同じものに交換しても、再び熱割れが起こる可能性は高まってしまいます。住まいの状況に合わせて適切にガラスを選択すれば、ガラスの熱割れは起こりづらくなるのです。ガラスが割れた際は正しい情報を知ったうえで専門家に相談することが、安心できる住まいにつながることでしょう。