私たちの暮らしに欠かすことのできない必需品である窓。
雨風や虫の侵入を防いだり、換気ができるなどのメリットはありますが、大きなデメリットとしては熱を伝えやすいことです。
つまり、夏になると強い日差しを通して部屋は暑くなり、冬になると暖房で温めた空気が外に逃げてしまい部屋は寒くなります。
そんな窓の欠点を解消してくれるのに役立つのが「複層ガラス」です。
このコラムを読んでいる方は、複層ガラスについて興味をもっているかと思いますが、興味はあっても複層ガラスの効果や種類などわからないことも多いでしょう。
そこで、今回は複層ガラスについて徹底的に解説します。
- 複層ガラスの特徴
- 複層ガラスに交換するメリット・デメリット
- 複層ガラスを選ぶ際のポイント
- おすすめの複層ガラス
複層ガラスについて詳しく知りたい・交換を検討されている方はぜひ最後まで読んでみてください。
複層ガラスの特徴は断熱性能の高さ
複層ガラスとは、複数枚のガラスの間に中空層があるガラスです。
中空層をつくることで断熱性能や遮熱性能を向上させています。
近年では大半の新築住宅で使われるようになりました。
ガラス間の空間を確保するために、スペーサーという乾燥剤が入った金属部材をガラス間に挟み込み、中空層に乾燥空気が封入されています。
複層ガラスの主な特徴は、単板ガラスと比較して断熱性能が高いことです。
単板ガラスの熱貫流率6.0に対し複層ガラスは2.9です(数字が小さいほど断熱効果が高い)。
「熱貫流率」とは、K値とも呼ばれるもので、断熱性能を表す率のこと。物体は必ず熱を伝えるが、熱伝導率ではなく、壁や床などの物体がどれだけ断熱することができるかという性能を表している。
出典:東建コーポレーション 「熱貫流率」
つまり、複層ガラスは単板ガラスの約2倍断熱性能が高いということです。
複層ガラスとペアガラスの違い
複層ガラスと一緒に「ペアガラス」という言葉もよく使われているので、同じモノだと思うかもしれませんが実は違います。
ペアガラスとは、日本のガラスメーカーであるAGCの登録商標です。
ペアガラスが市場に多く流通し認知されたことで、複層ガラスの別名のように使われています。
複層ガラスに交換するメリット
ここでは複層ガラスに交換するメリットについてご紹介します。
複層ガラスは単板ガラスと比較すると高額になるので、交換するか迷われている方も多いでしょう。
高額な費用をかけるだけの価値があるのか、参考にしてみてください。
- 断熱性能が向上する
- 窓から逃げる暖房熱の量を減らすことで節電につながる
- UVカット効果が向上する
- 防犯性や防火性を向上できる
断熱性能が向上する
前述したように、複数枚のガラスで中空層をつくることで、単板ガラスよりも優れた断熱効果を発揮します。
通常の複層ガラスでも断熱性能は高いですが、より断熱性能を求めるなら「Low-E複層ガラス」「トリプルガラス」などもあります。
Low-E複層ガラスは、複層ガラスの室外側・室内側どちらかに金属膜がコーティングされた複層ガラスです。
通常の複層ガラスより断熱性能が高く、気温が氷点下でも結露が発生しにくいのが特徴です。
また、Low-E複層ガラスには断熱タイプと遮熱タイプがあります。
断熱タイプは、冬の時期でも太陽光を多く透過するので室内は暖かくなり、暖房器具から出る熱が逃げるのを防ぐので暖房効率を高めます。
遮熱タイプは、夏の強い日差しをカットしつつ、室外の熱を遮り室内の涼しさを保ちます。
トリプルガラスは、その名のとおり3枚のガラスを組み合わせて構成された複層ガラスです。
3枚のガラスを組み合わせることで2つの中空層をつくり、通常の複層ガラスより約2倍の断熱性能を有しています。
節電につながる
断熱性能が向上すると、エアコンやストーブなどの暖房器具などでつくられた暖房熱を外に逃しにくくなります。
さらに、外から冷たい空気が伝わるのを防げるため、暖かい室温をキープしやすいです。
そのため、暖房機器の温度を大きくあげる必要がないので節電につながります。
断熱性能が向上して日々の暮らしが快適になるうえに、電気代の節約にもつながるので大きなメリットでしょう。
UVカット効果が向上する
ガラスは1枚でも紫外線をカットしてくれますが、ガラスが多ければ多いほど紫外線をカットします。
通常の複層ガラスでも約43%紫外線をカットできますが、Low-E複層ガラス(遮熱タイプ)で約76%、安全合わせ複層ガラス(防音タイプ)だと99%以上も紫外線をカットできます。
日差しの明るさは失われることなく、肌にダメージを与える有害な紫外線をカットしてくれるので安心です。
また、家具やフローリングなどの色あせや劣化を防ぐ効果もあります。
参考:YKK AP「かしこいガラス選び」
結露が発生しにくくなる
複層ガラスは単板ガラスと比べると結露しにくいです。
冬や梅雨時に窓に発生する結露は、カーテンや窓枠を汚すだけでなく、喘息・アレルギー症状の原因であるカビが発生しやすくなります。
日々の暮らしに悪影響をおよぼす結露ですが、外気の影響を受けにくい複層ガラスなら結露を防ぎやすくなります。
結露は室外の冷たい空気と室内の暖かい空気の温度差によって生じます。
室内の暖かい空気にはたくさんの水蒸気が含まれていますが、冷たいガラスに触れた空気が冷えると、空気に含みきれなくなった水蒸気が水滴となって付着するのです。
そのため、断熱性が高く室外と室内の温度差が生じにくい複層ガラスは結露防止に効果的です。
結露を不快に感じる方は、複層ガラスに交換するメリットが大きいといえるでしょう。
防犯性や防火性を向上できる
複層ガラスにはさまざまな種類があり、断熱効果や遮熱効果のある製品だけでなく、防犯性や防火性を高めた複層ガラスもあります。
防犯タイプは複層ガラスをより強化するよう合わせガラスになっており、日本の住宅侵入手口に多いこじ破りに効果的です。
防火タイプはガラスの中にワイヤーが入っており、火災時にガラスが飛散するのを防ぎます。
しかし、網入りガラスだと網が視界を遮ることで視界が悪くなるというデメリットがあるので、ワイヤーのない防火ガラスもあります。
防犯対策や防火対策を考慮している方は、交換を検討されるとよいでしょう。
複層ガラスに交換するデメリット
複層ガラスに交換するメリットについてお伝えしましたが、複層ガラスに交換するデメリットについてもご紹介します。
複層ガラスに交換するメリットは多いですが、デメリットも把握しておかないと交換して後悔することになるかもしれません。
複層ガラスに交換するデメリットを理解したうえで、交換を検討することをおすすめします。
- 単板ガラスより費用がかかる
- 単板ガラスより重い
- 遮音性能は低い
- 熱割れするおそれがある
単板ガラスより費用がかかる
複層ガラスは、ガラスを複数枚組み合わせて1枚の窓としてつくられているので、ガラスが1枚しかない単板ガラスと比べると費用が高額です。
具体的な費用を調べてみると、税込・送料別での単板ガラスの費用は19,987円※1。
複層ガラスの費用は31,179円※2でした。
※1腰高窓のサイズを想定して幅1,700mm・高さ800mm・厚み3mmで計算。
※2腰高窓のサイズを想定して幅1,700mm・高さ800mm・厚み3mm+3mmで計算
(サイズ・メーカで費用は異なります)
複層ガラスはガラスの中空層に何が封入されているかで費用が大きく変わります。
通常の複層ガラスに封入されている乾燥空気ではなく、さらに熱伝導率が低いアルゴンガスやクリプトンガスなどの断熱性能を高めるガスが封入されていると費用がさらに高くなります。
参考:オーダーガラス板.com
単板ガラスより重い
複層ガラスは複数枚のガラスで構成されているので、単板ガラスと比較するとガラスが増えているぶん重くなります。
単板ガラスの重さは約10.2kg※1。
複層ガラスの重さは約20.4kg※2となっています。
※1:腰高窓のサイズを想定して幅1,700mm・高さ800mm・厚み3mmで計算。
※2:腰高窓のサイズを想定して幅1,700mm・高さ800mm・厚み3mm+3mmで計算。
(多少の誤差が生じる場合があるため参考値)
そのため、ガラスの重さが原因で、窓を開け閉めする際に重みを感じるかもしれません。
また、ご自身でガラス交換することを検討されている方は、ガラスが重くなるので作業も大変になります。
遮音性能が低い
ガラスが多いほうが音を遮断できそうですが、音や声の高低の範囲である「音域」によっては遮音性能が低いといわれています。
これはガラスを複数枚組み合わせることで、低音域の音が聞こえやすくなる低音域共鳴透過現象※が原因です。
※低音域共鳴透過現象とは?
複層ガラスはガラスが2枚ある為、中高音域では遮音性が高くなります。
出典:ガラスの種類辞典「防音複層ガラス」
一方、騒音の聞こえやすい低音域では「共鳴透過現象」を起こすため、同じ厚みの単板(1枚ガラス)よりも遮音効果が下がる傾向があります。これを「低音域共鳴透過現象」と呼びます。
そのため、複層ガラスに遮音性を求めるのであれば、遮音性能が追加された複層ガラスに交換する必要があります。
熱割れするおそれがある
熱割れとは、ガラスに加わる温度差が原因でガラスに亀裂が入ってしまう現象です。
ガラスは熱が加わると膨張する性質がありますが、加わった熱が部分的でガラスに温度差が生じると亀裂が入ってしまいます。
熱割れは単板ガラスでも発生するおそれがありますが、複層ガラスのほうがより発生しやすいといわれています。
複層ガラスが熱割れしやすい原因は室外側のガラスと室内側のガラスの温度差が原因です。
室外側のガラスは太陽光を受けることで熱を吸収して温度があがりますが、室内側のガラスは太陽光の影響を受けにくいので温度差が生じ熱割れが発生しやすくなります。
めったに起こる現象ではないですが、知っておくとガラス選びで失敗するリスクを下げることができるでしょう。
複層ガラスを選ぶ際の4つのポイント
ここまで複層ガラスの特徴や交換するメリット・デメリットについてお伝えしてきました。
複層ガラスへの交換に魅力を感じる方もいらっしゃると思いますが、選ぶ基準がなかなかわからないでしょう。
複層ガラスを選ぶ際のポイントは下記のとおりです。
- 断熱性で選ぶ
- 遮熱性で選ぶ
- 設置する窓の方角で選ぶ
- 欲しい機能で選ぶ
複層ガラスへの交換を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
断熱性で選ぶ
同じ複層ガラスでも種類によって断熱性能の高さも異なります。
通常の複層ガラスより断熱性能を求めるのであれば、後述する「Low-E複層ガラス」や、中空層を真空にした真空ガラスへの交換を検討するとよいでしょう。
遮熱性で選ぶ
夏の時期は、なるべく部屋の温度をあげないように強い日差しの侵入を防ぎたいですよね。
遮熱性能を重視するのであれば遮熱タイプのLow-E複層ガラスがおすすめです。
室内の涼しい空気を逃がすことなく、太陽光の輻射熱の流入を減らし室内の温度上昇を抑えます。
設置する窓の方角で選ぶ
「Low-E複層ガラス」限定の選び方ですが、ガラスを設置する窓の方角によって選ぶのも効果的です。
というのも、窓のある方角や季節によって日差しの強さが異なるからです。
太陽光を取り入れたいのに遮熱タイプのガラスで太陽光の流入を防ぐのはもったいなく、反対に太陽光を防ぎたいのに断熱タイプのガラスで太陽光を通すのも非効率です。
つまり、直射日光を取り入れたい窓に断熱タイプのガラスを設置し、直射日光を防ぎたい窓に遮熱タイプのガラスを設置するのが効果的です。
下記の表で方角別におすすめのLow-E複層ガラスをまとめているので参考にしてください。
- 南
-
- おすすめの
Low-E複層ガラス -
断熱タイプ
- おすすめの理由
-
冬の時期に直射日光を多く取り込んで部屋を暖かくするため。夏は太陽の位置が高いので庇や軒があれば直射日光の多くを防げる
- おすすめの
- 西
-
- おすすめの
Low-E複層ガラス -
遮熱タイプ
- おすすめの理由
-
日差しの強い西側の熱を遮るため
- おすすめの
- 東
-
- おすすめの
Low-E複層ガラス -
遮熱タイプ
- おすすめの理由
-
西側と同じく日差しが強いため
- おすすめの
- 北
-
- おすすめの
Low-E複層ガラス -
遮熱タイプ
- おすすめの理由
-
夏は照り返しで幅射熱が入ってくるため
- おすすめの
欲しい機能で選ぶ
複層ガラスは、さまざまな機能を有したタイプの複層ガラスがあります。
断熱性や遮熱性を強化したガラスだけでなく、防犯性・防火性・遮音性を強化したガラスなどさまざまです。
ご自身が欲しい機能を有している複層ガラスを選ぶとよいでしょう。
複層ガラスを選ぶ際のポイントについてお伝えしてきましたがいかがだったでしょうか。
ご自身が求める機能を有した複層ガラスがイメージできたのであれば幸いです。
しかし、複層ガラスも数多くの種類があるので迷ってしまうかと思います。
そこで、ここではおすすめの複層ガラスをご紹介します。
おすすめの複層ガラスは真空ガラス
複層ガラスの基本的なメリットである「断熱性の高さ」を追求するなら、おすすめなのは真空ガラスです。
例えば、日本板硝子株式会社の「真空ガラススペーシア」は、2枚のガラスの間に0.2ミリの真空層と高断熱Low-E膜がある複層ガラスです。
断熱性能が非常に高く単板ガラスの約4倍といわれています。
室内から暖房熱が逃げるのを抑えるだけでなく、太陽光をほどよく取り込みながら冷気はブロックしてくれます。
また、断熱性能が高いことで結露防止対策でも優れた性能を発揮します。
単板ガラスなら室外の温度が8度で結露が発生しますが(※)スペーシアは-23度までなら結露が発生しません。
※算出条件:室内温度20度、室内相対湿度60%、室内自然対流、戸外風速3.5mの場合。
さらに、交換工事が簡単であることも大きなメリット。
スペーシアに交換する工事は、サッシから古いガラスを外してスペーシアに交換するだけなので簡単です。
真空ではないLow-E複層ガラスより高額ですが、費用をかけるだけの価値がある機能を有している優れモノです。
参考:日本板硝子株式会社「【公式】真空ガラス スペーシア|窓ガラスの結露防止対策に」
複層ガラスへの交換を検討中の方はガラス110番にご相談ください!
今回は複層ガラスについてご紹介しました。
この記事の要点を下記にまとめます。
- 複層ガラスは単板ガラスと比較して高い断熱効果がある
- 単板ガラスより費用が高額
- 南側の窓は断熱タイプで東西と北の窓は遮熱タイプがおすすめ
- おすすめの複層ガラスは真空ガラス
複層ガラスに交換するメリットが多いので、交換を検討されている方も多いと思います。
しかし、自力でガラスを交換するのは大変そうだし、業者に依頼するにしてもどんな業者がいいのかわからない方も多いでしょう。
複層ガラスへの交換をご希望される方は「ガラス110番」にぜひご相談ください。
お客様満足度98%以上※の実績をもつガラス110番が、迅速かつ安全にガラス交換のできる業者をご紹介します。
※弊社受付の満足度調査より(2016年7月実施)
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※対応エリア・加盟店・現場状況により、事前にお客様の了承をいただいたうえで、調査費用などをいただく場合がございます。