ムクドリ(椋鳥)は日本全域に生息し、季節による移動をせず各地で通年見られる留鳥です。全長24cmほどで、黒っぽい羽根には褐色と白がまだらに入り、足とクチバシはオレンジ色をしています。植物の種子、とくに椋の木の実が好物であることからこの名前がついたと言われていますが、雑食性で種子のほかに多くの害虫も食べるため、益鳥として法律により保護されてきました。
しかし近年では、そんなムクドリの鳴き声や大量の糞などによる被害を訴える人が、各地で増加し続けているのです。今回は、自分でできるムクドリ駆除の方法と、再被害防止のために知っておきたい重要ポイントをご紹介します。
むかしは益鳥、いまは害鳥?ムクドリによる被害が各地で増大中
ムクドリの家族(親2羽+ヒナ平均6羽)が捕食する虫の数は、1年で百万匹以上にのぼるという調査結果があります。農薬などが登場する以前の時代から、ムクドリは害虫駆除の役割の大部分を担ってきたため、当時は「農林鳥」とたたえられていました。昔から民家の集まる場所に生息し、里山や雑木林などに集まって休んでいましたが、都市開発が進むにつれて生活環境が破壊されていきました。
天敵である猛禽類などから逃げのびるため、タカやフクロウが寄り付かない場所を探してムクドリたちは移動し続けることになっていきます。そしてたどり着いたのは都市の大通りや駅前にある街路樹、観光地などの、安全でねぐらにしやすい大きな木がある所…昔よりもっと人間に近い場所だったのです。さらに、近年は郊外にオオタカなどが増えてきているので、身の安全を求めるなら都会の中心部まで入ってくるしかなかったのでしょう。
大量の糞と騒音、ムクドリによる代表的な被害
夏、夕方になるとムクドリの大群が都市部のねぐらに集結します。その下に降り注ぐ糞は数センチも積もることがあり、近隣の住民にとっては迷惑を通り越した大問題となっています。ムクドリのねぐら周辺は大量の糞だけでなく羽だらけになり、不衛生で悪臭も発生します。歩道や車、屋根やテラスなどは毎日否応なくこういった汚染にさらされてしまうのです。
もちろん掃除しても追いつかず、かといって放置すれば衛生面や景観が崩壊。雨樋が詰まるなどの被害も散見されるようです。観光地では、「体や服に糞が付着する」「くさい」などの苦情が寄せられ、景観の問題もあることから、各地の自治体でも大きな悩み所となっています。
また、ムクドリは日が暮れてもおかまいなしで、寝付くまで仲間同士のコミュニケーションを続けます。そのため近隣住民は、ムクドリの騒ぎ声で会話に苦労し、テレビの音声も聞こえないといったことが日常茶飯事のようです。
要注意!他にもまだあるムクドリの害
春から初夏が繁殖期であるムクドリは、この時期つがいで行動して巣を作ります。その場所はやはり、市街地などの人に近い場所にある木の上や、民家の屋根裏、軒先、雨戸の戸袋の中などです。数センチの隙間から潜り込んで巣を作り、産卵します。ヒナが巣立つまでの1か月ほどの間は家族ごとに巣を中心にして暮らしますが、ヒナの巣立ちと共に各家族が集結していき、やがてあの大群ができあがります。
わらや枯草を集めて作られるムクドリの巣は、場所によっては大きなごみ袋をいっぱいにしてもまだ収まらないほどのボリュームになります。そして完成した巣は、ヒナが育つ過程で強烈な悪臭を放ちはじめ、ダニなどの害虫が大量発生します。巣から溢れたダニは簡単に室内まで入ってきますので、ムクドリに巣をかけられた家庭はダニに刺されアレルギーに悩まされるという被害が多いのです。
子育ての邪魔をするのは気が引けますが、ムクドリの巣を見かけたらできるだけ早めに手を打つ必要があります。
※1 対応エリア・加盟店・現場状況により、事前にお客様にご確認したうえで調査・見積りに費用をいただく場合がございます。※2 手数料がかかる場合がございます。一部加盟店・エリアによりカードが使えない場合がございます。
自分でできるムクドリ駆除方法
ムクドリによる多数の被害を何とかしようと、全国の自治体も対策を模索していますが、まだ根本的な解決には至っていないのが実情です。それでも、少しでも有効と言われる手段が各地で繰り返し行われています。いくつかその代表的なものをご紹介します。
ホームセンターやネットで買えるもので防衛するなら…
【剥製や鳥型かかしで威嚇する】
実際にこういったものを見かけたことがある人は多いのではないでしょうか。ムクドリが天敵とみなす生物の剥製・かかしを使う場合の注意点は、例えばタカの剥製を使う場合には、本物がそうであるように木の頂上に設置すること。逆にフクロウの剥製を木の頂上に設置してしまうと、ムクドリ達は違和感を察知してニセモノであるとバレてしまうようです。
【スピーカーで天敵の鳴き声を流して脅す】
この場合も、日中はタカの声を使い、夜間はフクロウの声を使うというように、鳥の習性をきちんとおさえた上で行う必要があります。野生のカンをだますには、こちらも野生のルールを知らなければならないようです。
【網を張って侵入を防ぐ】
角目でマスの小さい網を張ることで、ムクドリの侵入を防ぎます。ベランダや玄関など、開放口がある程度限定されている場所であればガードすることができます。
【テグスやバードスパイクを使う】
ムクドリがいつもとまる場所にテグスやバードスパイク(長いトゲ状の棒が並んだ防除アイテム)を設置し、とまりにくくする方法です。網と併用することで効果が上がります。
【忌避剤を使う】
ムクドリがねぐらにしている木に忌避剤を施し、近づけなくする方法です。極端な高所への設置や、広範囲への設置になる場合は専門業者に依頼した方がよいでしょう。
【電飾で追い払う】
福井市では実際に、ムクドリの大群が集まる街路樹に赤、青、黄の各2千個のLEDイルミネーションを取り付け、夕方から朝までの点灯を数日間継続するという方法が行われました。個人で行う場合はここまでの規模は無理ですが、冬に玄関先や庭全面にクリスマスイルミネーションを設置して楽しむ家庭もありますので、可能な範囲でやってみる価値はありそうです。
もっとハードに戦うなら…
ここからはあくまで参考までに、多少の行動力が必要になる方法をご紹介します。
【タカを飛ばす】
各地で実際に行われ、高い効果が認められている方法の一つです。鷹匠さんに依頼し、ムクドリを鷹狩りのように追い回してもらうことで、絶大な効果があったそうです。タカの働きで1万3千羽以上いたムクドリが2カ月後には100羽に激減したという市もあります。
【ラジコンヘリ、ドローンを飛ばす】
実際に、忌避音を発生させるスピーカーを搭載したドローンで害獣の追い払いを行っている専門業者もいます。ドローンは1万円程度から高額なものまでありますが、個人でムクドリ相手にそこまで…という人には、3千円程度のラジコンヘリコプターもあります。ただ、どちらもムクドリを傷つける可能性がある点と、カメラが搭載されているドローンは近隣へのプライバシー侵害の恐れがある点にも十分な配慮が必要です。
【ロケット花火や爆竹の破裂音で脅す】
こちらも実際に、学校や農地などで行われている方法です。しかしお察しの通り、これを実行できるのは近隣住民に騒音の迷惑がかからない場所に限られます。もちろんムクドリにケガをさせない配慮も必要です。
いっそ環境を変えてしまうという手段も
こちらも行動力が必要となりますが、ムクドリのねぐら、とまり木となる庭木や街路樹をバッサリカットしてしまうのは効果絶大です。景観が大きく変わってしまうのが難点ですが、とまる場所がなくなるわけですから、即ムクドリはやってこなくなります。ただ、公園の木や街路樹の場合は自治体への伐採届などが必要になりますので、必ず事前に確認しましょう。
※1 対応エリア・加盟店・現場状況により、事前にお客様にご確認したうえで調査・見積りに費用をいただく場合がございます。※2 手数料がかかる場合がございます。一部加盟店・エリアによりカードが使えない場合がございます。
ムクドリ駆除で重要なポイント
ムクドリは元来人懐っこく、頭のいい鳥です。場当たり的な道具や一辺倒な方法では、すぐに「危険性はない」と見破られ、あっさり戻ってきてしまいます。現在は害鳥としての側面が注目されているものの、もとは法で守られた益鳥でもあるため強引な駆除もできません。個人では一体どうすれば、安全確実にムクドリを追い払うことができるのでしょうか。
仕掛けに慣れさせないよう、新しい方法を継続していくことが大切
ムクドリはカラスと同じように学習能力があります。先ほどご紹介した電飾にしても、毎日同じもので同じ光り方をさせていると慣れてしまい、全く逃げなくなります。定期的にアイテムや光り方を変えるようにしましょう。剥製や人形もしかりです。ムクドリを仕掛けに慣れさせないよう、次々と新しい方法を継続して繰り出していく必要があります。
世の中にはさまざまな防除用品がありますので、ネタに困ったらその都度ネットなどで調べて検討していきましょう。1万円前後のもので、電飾の色を変更でき、ランダム変動する超音波や威嚇音などの機能が搭載された防除アイテムもあります。赤外線センサーで害鳥や害獣の動きを感知し、水を強力に噴射するという防除装置も海外でよく使われており、パターンを学習されないようランダムに水を噴射し、慣れを防止する機能もあるようです。
自治体と違い、個人では鷹匠に依頼したり、騒音を伴うロケット花火などの乱用はできないため、こういった防除装置をムクドリが慣れる前に次々と入れ替えながら使っていくのが、現状最も効果が期待できる方法ということになりそうです。
もう打つ手なし?ムクドリとの「いたちごっこ」に疲れたら…
総合的に、費用対効果が最も良い方法はなんでしょうか。被害の規模が、網での防除のみで済めば悩む必要もないのですが、そうでない場合はやはり専門業者にお任せしてしまうのが確実かもしれません。ムクドリ駆除を業者に依頼した際にかかる料金は、状況や範囲にもよるため一概には言えませんが、調べてみると市販の防除装置と同程度の価格から駆除を請け負っている業者もあるようです。
自分で対応するにもコストがかかり続けることを考えると、最初に費用が計算でき、大変な駆除作業を任せてしまえる業者の方が、効果も約束されてお得と言えるかもしれませんね。ムクドリ被害で手を焼いている人は、試しに相談できる業者を探してみることで打開策が見つかる可能性もあります。
ムクドリ駆除業者を探すときは、まず実績とアフターフォローの有無をしっかりチェックすることをお勧めします。比較サイトなどもありますので、いくつかの業者を比べて、出張費や追加料金などの案内がきちんとしている業者なら、安心して利用できるでしょう。
まとめ
ムクドリはもともと、農作物に害を及ぼす虫を捕食することで国に利益をもたらす「農林鳥」とたたえられていました。その後、都市開発が進むにつれて生息環境を追われる中、都市に適応して大群を作るようになると、鳴き声による騒音や糞害などが大きな問題となりました。日本で長く益鳥とされてきたムクドリは、1994年からは狩猟鳥に指定されていますが、許可なく傷つけることは禁止されています。
数が非常に多く、学習能力もあるため、ムクドリの駆除は個人はもちろん自治体ですら決定的な解決が難しいのが現状です。被害を減らすべくさまざまな防除アイテムや、駆除を請け負う専門業者も多数あるため、状況に合った方法で対策をしていくことが大切です。