「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」こんな言葉を聞いたことはないでしょうか?
これは女性の美しさを形容した言葉です。今回はこの中でも、芍薬に注目してみました。
しかし、実際育ててみると「花が咲かない」「曲がってしまう」「枯れてしまった」といった失敗も多くあります。
芍薬を育てることは難しいと感じている方も多いでしょう。
「これから芍薬を育てたい」「今年こそはきれいに咲かせたい」そう思っている方たちへ、今回は大輪の芍薬を咲かせるコツや剪定についてお伝えします。
せっかく手間と愛情をかけるのだから、鮮やかな花を見たいですね。
また最後に、人気の芍薬の種類についてもご紹介しますのでぜひご覧になってください。
芍薬の剪定方法
芍薬を育てても花が咲かないことがあります。
芍薬は日本の環境に合っている植物なので、きちんと剪定すれば花を咲かせることができます。
ここでは初心者の方でもできる剪定方法をわかりやすく解説してきます。
芽かき
花が少しずつ咲き始めるころ、葉の付け根あたりから小さなかわいらしい芽が姿を現します。
「わき芽」といいますが、芽かきとはこのわき芽を切り取る作業です。
栄養を太い茎の蕾に集中させたいため、不要なわき芽は切り取りましょう。
細い茎、芽のない茎がその対象です。
摘蕾(てきらい)
蕾(つぼみ)を摘み取る作業が摘雷です。
蕾がたくさんあると栄養が分散されます。
必要な蕾にのみ収集させたいため、形のよさそうな蕾1つだけ残し、その他は摘み取ってしまいましょう。
ただし鉢植えの場合は3~5個残してください。
花がら摘み
花が咲いたあとは、しぼんで枯れるだけです。
花がら摘みとは、枯れた花を放置しないで取り除く作業です。
見た目が悪いだけではなく、清潔な状態にすることで病気や虫の発生を防ぎます。
ただし、花だけ取り除いても意味がありません。
種を作る部分から傷つけないようにハサミで優しく切り取ることで、無駄な栄養を行き渡らせないようにします。
刈り取り
刈り取りとは、花が終わり冬になる前に株元と地面の境目から茎を刈り取る作業です。
芍薬は「宿根草」といって冬の時期は全体的に枯れてきます。
しかし目には見えない地中の中では元気に生きているので、条件がよければまた次に年には開花します。
芽かきや摘雷をすることで、栄養を分散させずに一点に集中させることで開花できるようお手伝いをします。
またこの作業は、風通しがよくなるので病気になりにくい環境を作ります。
芍薬の育て方6つのポイントと株分け
剪定の手順は説明したので、次は上手に育てるコツについて解説します。
また株分けに関する疑問にもお答えしていきます。
栽培環境
たいていの植物に共通することですが、日当たりがよく水はけのよい場所を選びましょう。
ベストは葉に太陽がいっぱい当たり、地面は日陰になる場所です。
しかし1日中太陽を浴びる必要はありません。
午後は日陰になる、ちょっと日陰だけど明るいといった場所でも育てられます。
芍薬の葉は大きくなるので、それなりに広いスペースの確保をしてください。
芍薬は、どちらかというと涼しい地方で育てやすいですが、暖かい地方でも十分にきれいな花を咲かせられます。
芍薬は肥料食いといわれるほど、たくさん肥料を吸収します。
そのため土は、よく肥えた作物ができやすい堆肥と腐葉土などを混ぜた土を用意してください。
水はけのよい土を好むので、粘土質な土は土壌改良をしてください。
鉢植えの場合、8~10号のサイズに2~3年で鉢替え。
庭に直接育てる場合、5~10年は植え替えせず動かさないのが理想です。
水やり
乾燥させないように、鉢植えの場合は表面の土が乾いたら水を与え、乾燥させないようにします。
庭植えは雨がしばらく降らず乾燥しているようなら、地面が染み渡るほどたっぷり水を与えてください。
肥料
芍薬はたっぷりの肥料が必要です。
不足すると花がうまく咲かないこともあるため、時期によって肥料を与えなければいけません。
- 最初苗を植え付けるときの元肥
- 春の3月、芽が出始めてくる芽だし肥
- 花が咲き終わった5月のお礼肥
- 翌年の芽ができる10月の追い肥
- 寒い冬の2月の寒肥
肥料は根に当たらないように、株の周囲に円状にあげてください。
根が傷む可能性があります。
病気
- うどんこ病
-
うどん粉をまぶしたような白いカビが、葉や茎の表面に生える症状です。
- 灰色かび病(ボトリチス病)
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水が染みたような模様が現れます。
模様が広がり、最終的には植物全体が褐色に覆われ枯れてしまいます。
病が悪化すると株の根元までやられてしまいます。
対策として、発芽して開花までに2度、開花後に2度の殺菌剤を散布して予防しましょう。
カビはジメジメしたところに生えやすいので、水はけがよく風通しのよい場所で育てるとカビの発生が抑えられます。
害虫
- アブラムシ
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繁殖力は強いですが、虫自体は小さく弱々しいです。
植物の汁液を吸うため、大量発生すると生育に影響が出ます。 - ヨトウムシ
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ヨトウガという蛾の幼虫で夜型行動します。
植物の葉や実など食べ、穴だらけにします。 - コウモリガの幼虫
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蛾の仲間で、土に接触している茎などを食害するため枯れる原因となります。
対策として、虫が活発になる春~秋にかけて定期的に殺虫剤を散布します。
乳酸菌や米酢は、害虫と病気、両方の予防ができるのでおすすめです。
支柱建て
背の高い品種は、雨や風の影響で倒れてしまうことがあります。
アサガオによく使用されるような支柱で2ヵ所固定して、倒れることを防ぎます。
大きくなったら株分け
成長して大株になったら株分けをします。
これにより栄養の分散もでき、また芍薬の株を増やす目的にもなります。
株分けの適期は涼しくなった9月下旬、太い根から細い根が伸び始めたときです。
時期を間違えると細い根を傷つけてしまうので注意してください。
根はデリケートで折れやすいので、根先まで丁寧に掘ってください。
茎は根元から3cmほどでカットし、1株に3~5芽を残して株分けしましょう。
芍薬の栽培スケジュールを把握しよう
芍薬の年間スケジュールを説明します。
どの時期に何をしたらよいかを知ることが大切です。
苗の販売は10~4月です。
新芽が数個ついたもの、色がきれいなものを選んでください。
特に9月下旬~10月の時期は苗が土によく根付きます。
9月下旬~10月に植え付けるのが適期です。
日当たりがよく水はけ、風通しがよい好条件の場所に植えることで、翌年には花が咲くでしょう。
4月~6月に花を楽しむことができます。とくに5月に中旬が見ごろです。花の持ちは4~7日なので、花束にすると大きな花が豪華で鮮やかな印象があります。
花が咲き終わった8~9月に実がなり、中から種が取り出せます。
どれが好み?人気の芍薬をご紹介!
芍薬には、一重咲き、扇咲きといったシンプルでスッキリとした印象の「和芍薬」と、バラ咲き、つまり咲きといった花びらが多く香りが強い「洋芍薬」があります。
それぞれ個性があり、好みも人それぞれです。
ここでは人気の芍薬をご紹介します。
- サラ・ベルナール
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濃桃色のてまり咲きで、古い品種ですが初心者でも扱いやすい強さが人気です。
- かぐや姫
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八重咲きの、花径25㎝という超大輪です。色はソフトピンク色で花持ちが非常によいです。
- ソルベ
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花の色がピンク白黄と3段になり、ボリュームのある花が咲きます。
- プリマベラ
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大輪扇咲きで、外はクリーム色、中は黄色で切り花として人気があります。
また香りも芳醇です。 - 楊貴妃
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淡黄色で需品な印象のボール状の花形です。
中国原産で多種に比べてちょっと弱いのが難点です。
しかし小輪ながらもゴージャスな花を咲かせてくれます。 - コーラルチャーム
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最初はサンゴのような赤、花が開くとサンゴピンク、最後は薄く透き通るような色の変化を楽しめる大輪です。
初心者にはちょっと難しい品種ですが、花を咲かせたときの色のグラディーションの美しさはどの品種にも引けを取らないでしょう。
まとめ
魅力たっぷりの芍薬の剪定、育て方について説明しました。
たくさん肥料も必要で、虫や病気にも注意して……と手間はかかる植物ですが、花を咲かせてくれたときはそんな苦労も吹き飛ぶのではないでしょうか。
大きく丸いフォルムはとても愛らしく、ブーケとしても大変人気です。
また、和芍薬も洋芍薬どちらを選んでも、ゴージャスで気品ある大輪を咲かせてくれるでしょう。
芍薬をこれから育ててみようと思う方、昨年は失敗してしまった方、まだ間に合います。
ぜひ今回の記事を参考に自分だけの芍薬を育ててみてください。