お住まいの庭にお好きな庭木を植え、季節の移ろいによって姿を変える美しさを楽しんでいる方も多くいらっしゃるかと思います。
その景観を出来る限り維持していくためには、それぞれの病気についてもよく知ることが、庭木を育てていくうえで非常に大切です。
ここでは、植物の病気の原因とその防除法などについてご紹介しますので、病気の早期発見や被害を最小限に食い止めることにお役立てください。
庭木に多い病気の種類
いろいろな庭木に共通して発生する病気は、病原菌が寄生したり伝染したりすることが原因となることはあまり多くなく、庭木を取り囲む環境が悪くなることにより生育が衰えることで庭木の中の病原菌の密度が高くなることが主な原因となります。
また、病気が発生する箇所は、大きく分けて「根」「枝・幹・樹皮」「葉」の3 つに分類することができます。
それぞれで発生する病気が異なりますので、ここではその具体例を挙げていきます。
根の病気
ナラタケ病
- 発生する樹種
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松・ヒノキ類、多くの広葉樹
- 主な症状
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- 根の腐敗、衰弱、枯死
- 秋に椎茸と類似した淡褐色系のきのこが多数群生
白紋羽病
- 発生する樹種
-
草本類( イネ科以外)、広葉樹、針葉樹
- 主な症状
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- 根の樹皮肥大
- 白色~灰白色のカビ( 菌糸膜) が発生
根頭がん腫病
- 発生する樹種
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バラなどの花木、リンゴなどの果樹
- 主な症状
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- 球形または半球形のコブ状の隆起を形成
※バラの場合はカルスと呼ばれる正常なコブとの見分けが難しいため、注意が必要です
- 球形または半球形のコブ状の隆起を形成
枝・幹・樹皮の病気
こう薬病
- 発生する樹種
-
サクラ、アンズ・ミカン類などの果樹
- 主な症状
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- 枝や幹の広範囲に毛足の短いカビが発生
- 細い枝は衰弱枯死する場合あり
てんぐ巣病
- 発生する樹種
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サクラ類、ツツジ類、カンバ類
- 主な症状
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- 葉の異常成長( 短い枝が多数形成される)
胴枯病
- 発生する樹種
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カシ類、プラタナス、ポプラなど
- 主な症状
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- 傷口が赤・黒褐色に変色
- 小さな隆起物を多数形成
- 病患部より上の部分が枯死
葉の病気
うどんこ病
- 発生する樹種
-
庭木や草花などほとんどの植物
※うどんこ病にはさまざまな種類があるため、例えばバラに発生するうどんこ病がほかの植物に見られることはありません。 - 主な症状
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- うどん粉をまぶしたような白いカビが発生
- 光合成を阻害され、生育不良に繋がる
すす病
- 発生する樹種
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庭木、観葉植物など
- 主な症状
-
- 黒色病斑を形成
- 光合成を阻害、最悪の場合は枯死に至ることも
もち病
- 発生する樹種
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サザンカ、ツバキ、シャクナゲなどの花木
- 主な症状
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- 焼いた餅のように葉が球状に膨らむ
- 病気の進行に伴い、表面が白いカビで覆われる
庭木の病気の原因とは
上記のような病気に庭木がかからないようにするためには、それぞれに最適な防除法を講じていくことが大切ですが、より効果をあげるための大前提としては、その原因を把握しておくことです。
原因として一般的に知られていることは「病原菌」や「病害虫発生」によるものですが、このほかにも外的ストレスなどいろいろなことが挙げられます。
ここではそれぞれの原因について解説いたします。
病原菌によるもの
カビ(糸状菌)
- 発生する病気
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黒斑病や炭そ病など斑点性の病気
- 主な特徴
-
- 病気を発生させるためには、適度な湿度と温度が必要
(そのため梅雨の時期の発生が多い) - 風や雨水によって移動、胞子が葉などに付着
- 付着した部分が雨などで濡れることで胞子が活動を開始、発病する。
- 病気を発生させるためには、適度な湿度と温度が必要
細菌
- 発生する病気
-
青枯病、根頭がん腫病など
- 主な特徴
-
- 高温低湿の場所で発生
- 気温の上昇に伴い、地温が20℃以上になると多発
- 土の中で長期間生存可能
- 雨水だけでなく水やりなどでも移動するため、土を耕したときなどに傷などから侵入することがある
害虫によるもの
アブラムシ
- 発生する病気
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ウイルス病(モザイク病)
- 主な特徴
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- 植物の汁を吸うことで他の植物にウイルスを媒介する
- 「すす病」では、アブラムシの排泄物を栄養にするため、アブラムシが寄生している間は年中繁殖する
カイガラムシ
- 発生する病気
-
すす病、こう薬病など
- 主な特徴
-
- 種類が非常に多いため、それぞれで習性や体形なが異なる
- メスは成長すると脚が退化し、枝や幹などに一生寄生するものがほとんど
ハダニ
- 発生する病気
-
葉肉崩壊症、葉やけなど
- 主な特徴
-
- 脚が8 本あるダニの仲間
- 高温乾燥を好み、短期間での大量発生が可能
- ポインセチアなどに寄生する
その他
環境から受けるストレス
庭木は、生育されている環境から受けるストレスによって下記のような被害が発生する場合があります。
- 凍害
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冬の寒さがその植物が持っている耐寒性の限度を超えた場合に起こる冷却の被害。耐寒性の低いヒノキやスギなどでは致命的な被害になることもあります。
- 寒害
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気温が極端に下がった場合に起こる、生育が阻害されてしまう被害。場合によっては植物が枯死に至ることもあります。
庭木の防除法
薬剤散布
オリーブなど虫のつきやすい庭木には、病害虫防除と駆除のため、その生育過程で毛虫などを含む病害虫に効く薬剤を散布して消毒を行ない、植物の体内への侵入を防ぎます。また、病害が発症してしまった場合には病枝を切り取り、その切り口からさらに腐れが入ってこないように、防腐剤や殺菌剤を用いて防腐処理を行ないましょう。
採光・通風
植物の病気の原因となるカビや細菌などは、湿度の高い状態を好むものが多いため、採光や通風を良好することが大切です。降雨後などには特に注意するようにしましょう。
土壌改良
細菌は土の中で生存し続けるため、それらに負けない土壌を作ることがいちばんの防除法になります。腐葉土を混ぜたり、土を掘り返す「天地返し」を行なったりすることも、土壌改良の第一歩となります。
病気に強い樹木
病気に強い庭木には下記のようなものがあります。
もちろん、下記の樹木は病気に「強い」樹木であって、病気に「掛からない」樹木ではありませんので、適切な防除対策も重要です。
果樹
- イチジク( ゼブラスイート、ヌアールドカロンなど) ・プラム・すもも
- 夏みかん・ゆずの木・すだち
- 栗の木・グミの木( ビックリグミなど)
- ブラックベリー・ピオーネ など
庭木
- モクレン・スモークツリー
- シネマトリコ・ジューンベリー・ニーム
- クスノキ など
庭木の病気を防ぐためには、ここでご紹介した防除法をとることも大切ですが、冬になって剪定をし忘れた、ということがないように、こまめにそして正しい方法で剪定そのものを行なっていくことが大切です。
また、その剪定には、種類によって適する時期なども異なるため、一年を通じてお付き合いのできる剪定業者を探すことも、庭木の病気の防除には有効であるといえるでしょう。