松を育てているなら、「きれいな樹形を作って楽しみたい」と思いますよね。
また、しばらく放っておいたら「枝が伸びすぎて格好が悪くなってしまった」ということもあるでしょう。
松のきれいな姿を作るには枝を切って整える剪定が必要ですが、「松の剪定は難しくて大変」というイメージがありませんか?
じつは松の剪定は、ポイントを押さえれば簡単かつ効率的に済ませることができます。
たしかに松の剪定はほかの樹木に比べて独特で手間が多いですが、ひとつひとつの作業はシンプルだからです。
この記事では、以下の内容を解説します。
- 一番効率的な松の剪定時期
- 枝が伸びすぎた松を小さくする方法
- 美しい樹形を作るコツ
このコラムを読めば風情ある松のあるお庭を最小限の手間で長く楽しめるようになります。
松の剪定は初夏に1回で済ませるのが効率的
松の剪定は初夏と秋の年2回剪定をするのが一般的なセオリーですが、なかなか頻繁に手をかけていられないということもありますよね。
そんな場合は、剪定を初夏に1回で済ませることも可能です。
年2回剪定をするのは松の枝葉をこまめに整えるためですが、それぞれの作業を一度にまとめても十分きれいな見た目を維持できるからです。
1回の剪定でも毎年おこなっていれば、それほど大きく樹形が乱れることはありません。
盆栽などで特に見栄えを重要視する場合は年2回の剪定が理想的ですが、庭木として健康に育て、風景の一部として楽しむ程度なら剪定は1回でも十分なのです。
松は大きさによっては1回の手入れに丸1日以上かかることもあるので、剪定が年1回で済めばかなりの時間と労力が省けます。
植木屋などに頼む場合でも費用の節約になります。
松の剪定が年2回なのは作業内容が違うから
年2回の剪定では、初夏にミドリ摘み、秋にもみあげと枝透かしという作業をおこないます。
ミドリとは春から初夏にかけて枝先に伸びてくる松の新芽のことで、5月~6月頃にこの新芽を摘み取っておくのがミドリ摘みです。
枝先にロウソクのようなミドリがひょろっと伸びている姿は見栄えが悪いです。
また、ミドリは夏以降に生長して枝になるので、そのままにしておくと樹形が乱れてしまいます。
ミドリ摘みをすることで見た目を整え、きれいな樹形を維持できます。
もみあげは古い葉や多すぎる葉をむしり取ることです。
枝透かしは枯れた枝や見栄えの悪い枝など、不要な枝を切り取ることです。
混み合った枝や葉を適度に減らすことですべての枝に十分な日光が届くようになり、松全体の生育がよくなるのです。
もみあげと枝透かしは一般的に10月~12月頃におこないます。
夏の間に生長した枝葉を生長が穏やかになる秋頃に整理することで、整った樹形を春まで維持できるからです。
1回にまとめても問題ない
作業ごとに時期を分けるのが教科書どおりの剪定ですが、初夏にすべての作業をまとめておこなえば1回で済ませられます。
5月~6月頃にミドリ摘みと一緒に枝透かしともみあげもしてしまうのです。
松の樹勢や環境にもよりますが、初夏にしっかりミドリを摘んでおけば、秋の手入れはしなくてもみっともないほど枝が伸びることはありません。
例えば東京都文京区にある肥後細川庭園では、毎年初夏にまとめて松の剪定をしている様子が公式サイトで紹介されています。
一方、秋にまとめて剪定する方法もあります。
ただ、秋にミドリ摘みをするのは初夏に比べて手間が多くなります。
秋にはミドリはすでに枝になって葉が出いるので、枝のどこまでが今年伸びた部分なのかを見極めながら切っていく必要があるのです。
初夏はミドリがわかりやすく、やわらかいため簡単に摘み取ることができます。
また、全体のシルエットから突き出すミドリや夏にミドリから葉が開いた姿は特に悪目立ちするので、ミドリ摘みは初夏のうちにしておいたほうが松の美しい姿を長く楽しめます。
そのため、剪定を一度に済ませるなら初夏がおすすめです。
基本的な3つの剪定方法
松の剪定方法であるミドリ摘み、枝透かし、もみあげの基本的な作業方法をご紹介します。
1回にまとめる場合と2回に分ける場合とで少し方法が違いますので、それぞれ確認していきましょう。
ミドリ摘み
初夏にミドリ摘みをする場合、基本的に手でミドリを摘み取ります。そのほうが効率がよいからです。
芽吹いて間もないミドリはやわらかいので、手でつまんで曲げれば簡単に折り取ることができます。
作業時は手袋を着用するのがおすすめです。
松は葉がとがっていて当たると痛いだけでなく、松ヤニで手が汚れてしまうからです。
ミドリは1本の枝から数本出ていることが多く、大きさに違いがあります。
そのうち長いミドリを摘み取り、短いミドリを1本の枝に2本程度残しましょう。
短いミドリを残しておくのは、枝が増えすぎるのを防ぐためです。
ミドリをすべて摘み取ると、松はそれを取り戻そうと余計にたくさんの新しい芽を出します。
芽が増えると夏以降に枝葉がボサボサと混み合って樹形が乱れたり、日当たりや風通しが悪くなったりするのです。
短いミドリを残しておけば、そのミドリに栄養が注がれるので、新しい芽は出にくくなります。
脇のミドリも長くなっている場合は、途中で折ります。
残っているミドリの最大の長さが同じくらいになるようにイメージしましょう。
ミドリの長さをそろえることで、夏以降に葉が開いたときにも全体のシルエットがそろいます。
初夏に1回だけ剪定をする場合、ミドリ摘みは6月頃のやや遅めの時期にするのがおすすめです。
ミドリがある程度伸びて体力を使った頃に摘み取ることで、その後ほかのミドリの生長が穏やかになり、樹形が乱れにくくなるからです。
生長したミドリは硬くなっていることがありますので、その場合は手ではなくハサミで切り落としましょう。
ハサミで切るときには、一緒に葉を切ってしまわないよう注意しましょう。
葉の長さが不ぞろいになって見栄えが悪いだけでなく、切った部分が変色することがあります。
ハサミは先端が細くなっていて細かい作業がしやすい植木バサミがおすすめです。
ホームセンターなどで1,000円程度で販売されていますが、家庭用のものは100円ショップなどでも手に入ります。
初夏ではなく秋にまとめて剪定をする場合も、ハサミを使ってミドリ摘みをします。
秋にはミドリは枝になって葉が出ていますので、ミドリにあたる今年伸びた分の枝を切ります。
松の枝はその年に伸びた枝ごとに脇枝が付いているので、そこを目印に枝分かれの部分で真ん中の長い枝を切りましょう。
初夏のミドリ摘みと同様に、2本程度の脇枝を残しておきます。
もみあげ
もみあげは初夏の場合も秋の場合も方法は同じです。
各枝の先端だけに葉を残して、他の葉をむしり取りましょう。
ブラシのようになっている葉を取り除くことで全体がサッパリとし、枝先に葉が立ち上がった松らしい姿になります。
ミドリ摘みと同様に、もみあげもハサミではなく手でおこないます。
ハサミを使うと葉の根元部分が残って見栄えが悪くなります。
手袋を着用しましょう。
葉の根元部分を指でつまんで引っぱると、葉が取れます。
葉をむしる枝の上から手を入れると葉が手に刺さるので、枝の下から手を差し込むと作業がしやすいです。
枝の付け根方向へ引っ張ると一緒に枝の皮がはがれたり小さな芽が取れたりするので、葉が生えている方向へ引っ張りましょう。
引っぱる力で枝が折れないように、空いている手で枝を押さえておきます。
たくさんの葉をまとめて取る場合は、指に絡めるようにして葉をつかんで引っぱります。
枝透かし
枝を切り落とす剪定である枝透かしではどの枝を切るのかを迷ってしまうことが多いですが、基本的には不要な枝を取り除いていくだけです。
取り除くべき不要な枝とは、以下の5種類です。
- 枯れた枝
- 長すぎる枝
- 流れの悪い枝
- 他の枝と重なっている枝
- 葉が混み合っている箇所の枝
枯れた枝は残しておいても回復しないだけでなく、病気や害虫が発生する原因にもなります。
枝の先端まで葉が茶色くなっている枝、芽や葉がひとつも付いていない枝、曲げてみて簡単に折れる枝などは枯れた枝です。
全体のシルエットから突き出して長く伸びる枝、内側や真下、真上に向かって伸びる枝、他の枝とぶつかるように伸びている枝は樹形を崩します。
他の枝に覆いかぶさるように伸びている枝や枝葉が密集している箇所があると、日光を遮って陰になる枝の生育が悪くなるのです。
このような枝は、枝の付け根から切り落としましょう。
途中で切って葉がない状態の枝を残しても、その枝は光合成ができなくなって枯れてしまいます。
混み合っている葉の量を減らしたいときは、枝分かれのところで真ん中の位置にある枝を切ります。
枝をY字に残すことで葉の密度が薄くなり、扇型に均等に広がっていくきれいな樹形ができます。
枝透かしでは植木バサミや剪定バサミ、場合によっては剪定ノコギリを使います。
一般的に植木バサミは直径1cm程度、剪定バサミは直径2cm程度の枝を切ることができます。
直径2cmを超える太い枝を切る場合は剪定ノコギリを使いましょう。
いずれもホームセンターなどで2,000円前後で販売されています。
放置した松を剪定で小さくする方法
数年間放っておいてボサボサになってしまった松を仕立て直したい場合も、先端に葉が残るように切る方法を応用すれば枝を短くできます。
葉が残る位置までなら大胆に切ってもよいということです。
切りたい枝を根元へたどっていき、枝分かれや新しい芽のある位置で切ります。
極限まで短くしたいなら、一番根元近くにある枝の上で切りましょう。
枝分かれをしていない枝を短くしたい場合は、葉のまとまりの途中で切ります。
短くしたい位置に枝も葉もない場合、いったんできるだけ短く切り戻し、周りの枝を透かします。
先端を切られた枝は伸びることができなくなり、さらに枝透かしで枝の根元まで日を届かせることで、新しい芽を出す可能性があります。
根元付近に新しい芽が出て生長したら、長い枝を切り落として新しい枝に切り替えるのです。
長く放置してしまった枝はそのように数年かければ、きれいな樹形に仕立て直すことができます。
松の樹形が簡単に美しく仕上がるコツ
ここまでご紹介したのは基本的な剪定の手順ですが、松の剪定にはもっと上級者向けのテクニックがあります。
松をより自分好みの樹形に仕上げる剪定をマスターしたいという方のために、美しい樹形を作るコツをいくつがご紹介します。
- 上から下・奥から手前の順で進める
- 短葉法で小ぶりに仕上げる
- 葉の量に変化をつける
- 枝ごとのまとまりで樹形を作る
上から下・奥から手前の順で進める
松の剪定をするときに効率のよい進め方は、松の頂点から下へ、手の届く範囲の一番奥から手前へ進めていく方法です。
下の枝を仕上げてから上の枝に取りかかると、切り落とした枝や葉で下の枝が汚れてしまいます。
掃除が二度手間になるので効率が悪いのです。
また、手前側を仕上げてから奥に進めていくと、せっかく仕上げた枝や芽が体に当たって折ってしまうおそれがあります。
上から下、奥から手前の順に仕上げながら掃除もしていけば、一度手をつけた部分を往復することなく作業を進められます。
短葉法で小ぶりに仕上げる
短葉法とは、ミドリ摘みの手法の1つです。
通常のミドリ摘みでは短い緑を数本残しておきますが、短葉法はすべてのミドリを摘み取ってしまいます。
残すミドリを検討する必要がない分、作業が楽になります。
短葉法でミドリ摘みをしている松の大きな特徴は、松の葉が短くなることです。
すべての芽を摘まれた松は新しい芽を出しますが、芽を出すために余計な体力を使った分、葉があまり生長できなくなるからです。
葉が短い松は小ぶりで引き締まった印象になります。
そのため盆栽などコンパクトにまとめたい松に対して短葉法が使われます。
大地でのびのびと育つ松を鑑賞したい場合には不向きですが、お庭に納まる手頃なサイズで楽しみたいという方にはおすすめです。
葉の量に変化をつける
もみあげで葉をむしる際、松の上のほうの葉を薄く、下のほうは濃くすると全体の生育バランスがよくなるのでおすすめです。
上のほうにある枝にはよく日が当たるので、自然にしておくと上のほうの枝ばかりが伸びて樹形のバランスが悪くなることがあります。
上のほうの葉を少なくしておくことで光合成が抑えられ、下のほうの枝と同じくらいの伸び方になるのです。
同じ理由で、今後長く伸ばしたい部分の枝は多めに、長くしたくない枝には少なめに葉を残すのも好みの樹形を作るテクニックです。
枝ごとのまとまりで樹形を作る
枝がさまざまな方向へ伸びる松の樹形を作るのは難しそうに感じますが、1つ1つの枝に注目していけば全体もきれいに仕上がりやすくなります。
枝をひとかたまりの山型にし、その山が集まって大きな山になるようなまとまりを作るのです。
そうすることですべての枝が扇を広げたような風情ある松の樹形になります。
いきなり全体を仕上げようとするのではなく、枝ごとに地道に仕上げていきましょう。
松の剪定が面倒なときはプロに任せるのもおすすめ
自分で松の手入れを極めるのももちろん楽しいですが、もっと楽に美しい松を楽しみたい場合は剪定のプロに任せるのも有効な方法です。
「とはいっても剪定業者が何をしてくれるのかよくわからない」という方のために、プロに剪定を頼むメリットや費用をご紹介します。
剪定をプロに頼むメリット
剪定業者に剪定を頼めば自分で剪定をする時間や労力が省けることはもちろんですが、他にも以下のようなメリットがあります。
難しい状況にも対応できる
剪定業者は、「数年放置した松を小さくしたい」「好みの樹形に仕立てたい」「弱った松を回復させたい」といったさまざまな要望に対応できます。
剪定業者は知識や経験によって松の性質をよく把握しているので、どのような状況にどのような対処が必要なのかを的確に判断できます。
施主の要望に合わせて施工方法を相談しながら、納得のいく剪定をしてくれるのです。
あと片付けもしてくれる
松の剪定では切る枝や葉が多いので、その掃除や処分が大変です。
剪定した切り枝や先端のとがった松の葉は自治体によっては通常の可燃ゴミとは違った方法でゴミ回収に出さないといけないこともあります。
剪定業者では基本的に、剪定後の掃除やゴミを引き取っての処分も請け負っています。
すべて任せておけば、あとにはきれいに整った松だけが残るのです。
庭のお手入れをまとめて頼める
剪定を頼める業者のなかには、木の剪定以外にも伐採や植樹、施肥や消毒、芝生の手入れ、砂利敷きなどお庭に関するさまざまな施工を請け負っている業者があります。
このような業者に頼めば、面倒なお庭の管理を一度にまとめて済ませることもできるのです。
庭木や芝生の定期的な手入れを頼める業者もあるので、利用すれば手間なくきれいな状態のお庭をずっと保っていくことができます。
松の剪定には見積りが必須
業者に頼むとなるとやはり「どれくらいの費用がかかるのか」が気になるところですが、松の場合は事前に見積りを取って料金を確認する必要があります。
松はその他の庭木とは料金の体系が違う場合があるからです。
松の剪定はミドリ摘みやもみあげなど手作業が多く手間がかかるうえ、独特な樹形のものも多いため美しく仕上げるのには高度な技術を必要とします。
大きさだけでなくどのような仕立て方なのかによって施工内容も大きく変わるため、松は別途見積りが必要としている業者が多いのです。
まずは剪定業者に問い合わせをし、見積りを出してもらいましょう。
その際は、見積り料無料の業者を選ぶことが重要です。
料金やスタッフの対応を見てやはり頼まない判断をした場合、見積り料が発生すると無駄になってしまうからです。
参考までに、松以外の庭木剪定費用の相場をご紹介しておきます。
提示された料金が極端に高かったり安かったりする場合は、別の業者からも見積りを取って妥当かどうか確認してみましょう。
庭木剪定費用の相場
木の高さ | 1本あたりの剪定金額 |
---|---|
3m未満 | ¥9,851 |
3~5m未満 | ¥14,796 |
5~7m | ¥24,924 |
7m以上 | ¥38,044 |
集計期間:2021年1月~2021年12月(1,196件)
集計対象:弊社運営サイト全体における剪定の施工実績
集計方法:対象の平均値を算出(※)し、小数点以下を四捨五入
※大規模な施工など特殊なケースを除く費用の平均値を算出するため、上下2.5%の施工費用を異常値として集計対象から除外しています。
剪定後のゴミ処分費を含んだ料金です。
見積り料無料の業者を3社ほどピックアップし、相見積りで比較検討するのもおすすめです。
大切な松を手入れしてもらう業者は、じっくりと吟味して選びましょう。
松の剪定なら剪定110番にお任せください!
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いたやんの剪定らいふチャンネル
横浜マイスター:木下透の剪定講座
最終閲覧日:2022年5月24日