ジャムやお菓子の材料などでおなじみの果実であるラズベリー。ラズベリーは寒さや暑さに比較的強く、育てやすい植物として知られています。
ですが、木に成る果物であることから「育てるのが難しそう……」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
たしかに、ラズベリーをうまく育てるためには正しい知識と栽培管理方法を知ることが必要です。しかし、ポイントを抑えることで、初めての方でもラズベリーを栽培し収穫することは可能なのです。
そこでこの記事では、うまく収穫するために必要なラズベリーの剪定(せんてい)方法や育て方などをはじめとした、栽培管理方法のポイントについてご紹介します。
剪定する前にラズベリーの特徴を知ることが大切
ラズベリーの剪定をする前に、「ラズベリーとはどんな植物なのか」を知っておきましょう。
もしラズベリーの特徴を知っていなかった場合、うまく育てることができず収穫ができなくなってしまう可能性があるからです。
ここでは、以下の2つのラズベリーの特徴について、詳しく解説していきます。
- ラズベリーは混合花芽である
- ラズベリーには一季なり性と二季なり性の2種類がある
ポイント1:ラズベリーは混合花芽
一般的な植物の芽には、花をつけてから実が成る「花芽(はなめ)」と、生長することで葉が生い茂る「葉芽(ようが)」の2種類があります。
さらに花芽には枝から花だけが咲く「純正花芽」と、花芽と葉芽の2つをあわせ持っている「混合花芽」があります。ラズベリーの場合は混合花芽という種類であり、それを踏まえたラズベリーの剪定が必要になるのです。
またラズベリーのような混合花芽の場合、初夏である7月上旬~中旬から花や葉が作られる「分化期」が訪れることも覚えておきましょう。
ポイント2:一季なり性と二季なり性
ラズベリーには、収穫可能な回数が異なる「一季なり性」と、「二季なり性」という2つの種類があります。なお、それぞれの種類によってラズベリーの剪定時期や方法が異なるため、ラズベリーの特徴を知っておくことは大切なのです。
一季なり性
一季なり性は、1年に1回収穫が可能な種類で、収穫期は6月~7月ごろとなっています。ラズベリーの適期に植え付けをした場合の収穫までの流れは以下となっているので、覚えておくとよいでしょう。
- 春に株元から枝が伸びるが実が成ることはなく、冬を超えると結実母枝になる
- その翌年の春にラズベリーの花が開花し、やがて実が成り収穫が可能となる
- 実が成った後のラズベリーの枝は、冬ごろまでに枯れてしまう
二季なり性
二季なり性は、1年に2回の収穫が可能な種類です。収穫期は6月~7月ごろと10月~11月ごろとなっており、以下の流れによって収穫することができます。
- 一季なり性の「1~2」と同じ流れで実が成り、収穫することができる
- さらに秋頃、春に株元から出た枝にラズベリーの花が咲き、収穫が可能
- 秋に収穫したラズベリーの枝は結果母枝となり、翌年の春に収穫が可能
- その後、ラズベリーの枝が枯れてしまう
ラズベリーの剪定時期と方法&コツ
先ほどの「混合花芽であること」と「一季なり性と二季なり性の種類があること」を踏まえてラズベリーの剪定時期と方法についてご紹介していきます。
一季なり性の場合
一季なり性のラズベリーの剪定は、夏と冬の2回おこないます。剪定時期は、6~7月に収穫した後の8月ごろと、12月~2月ごろです。
6月~7月にラズベリーを収穫した枝はやがて枯れてしまうため、夏の剪定は8月ごろのなるべく早い段階で剪定しておくことがおすすめ。夏の剪定をおこなう際は、枝の付け根部分から剪定用のハサミやノコギリなどで切るようにしましょう。
また冬におこなう剪定では前年に生えた不要な枝を、地面ぎりぎりのところを狙って切るようにしてください。
二季なり性の場合
二季なり性のラズベリーの剪定は、12月~2月ごろの冬の時期に1回おこないます。剪定方法は、秋に実が成ったラズベリーの枝以外のすべての枝を地面ぎりぎりのところまで切るというものです。
先ほどの「ラズベリーの特徴」で解説したように、秋に実が成った二季なり性のラズベリーの枝は、翌年の春に結果母枝となりもう1度収穫が可能になります。そのため、うっかり必要な枝を剪定してしまわないように注意するようにしましょう。
ラズベリーの栽培管理方法|育て方~病気・害虫について
うまく収穫するまでに育てるためには、栽培管理方法や病気・害虫の対策など、ラズベリーの剪定以外についても知っておくべきことがあります。ここでは、ラズベリーの収穫までに必要な育て方について細かく解説していきます。
植え付け
ラズベリーはいつでも植えていいわけではなく、以下のような適期に植えないとうまく育たない場合があるので注意しておきましょう。
- 2月~3月(休眠時期なのでとくに適している)
- 9月~11月(ただし、寒すぎる場合は避けておく)
また、ラズベリーの栽培環境にも気を付けておく必要があります。ラズベリーは日当たりが良い場所や弱酸性の土を好む植物です。
そのため日陰になりがちな場所は避け、腐葉土に赤玉土を混ぜた良質な土を使ってラズベリーの植え付けをおこないましょう。なお、ラズベリーの植え付けは庭植え・鉢植えどちらでも問題ありません。
うまく植え付けをおこなえたら、ラズベリーに十分な水を与えておくことも忘れないようにしてくださいね。
水やり
ラズベリーは庭植えの場合と鉢植えの場合で水やりの頻度が異なります。それぞれの水やり方法について確認しておきましょう。
庭植えの場合
ラズベリーの植え付け時に水をしっかりと与えておけば、基本的には毎日水やりをする必要はありません。
しかし、庭の土が乾いている場合は水やりをする必要があります。そのため定期的に、ラズベリーを栽培している庭の土の乾き具合をチェックしておくとよいでしょう。
鉢植えの場合
鉢植えの場合、庭植えよりも細かく水やりをすることが大切です。目安として春は1日1回、夏は1日2回の水やりをしてあげるとよいでしょう。
また、庭植えと同じく土が乾いていないかの定期的なチェックをして、土が乾いていたら水やりをすることも大切です。
肥料
ラズベリーがしっかり育つためには、土に肥料を追加してあげることも大切です。「3月・5月・8月」のタイミングで年に3回追肥するようにしましょう。
また追肥をするときはラズベリーの株元ではなく、少し離れた位置でおこなうことがポイント。目安としては、ラズベリーの枝の広さよりも外側に追肥をしておくとベストですね。
病気
ラズベリーの栽培をするときは、「灰色かび病」「うどんこ病」という2つの病気に気を付ける必要があります。
灰色かび病
灰色かび病は茎・葉・実などがカビによって浸食されてしまう病気で、梅雨などの湿度が高い環境で起こりやすいといわれています。見た目が悪くなりますし、ラズベリーがうまく育たなくなる原因にもつながるため、できる限り対策しておきたい病気です。
対策・予防方法としては、「枝が混みあっている状況を避ける」「風通しの良い環境にする」など、なるべく湿度が高くならないようにすることがあげられます。
また、灰色かび病はほかの葉や枝にうつる可能性がある病気という点にも注意しましょう。もし発病してしまったら、病気の蔓延を防ぐために発症箇所の除去をすることも必要になります。
うどんこ病
うどんこ病とは、葉や茎の表面にうどんの白い粉のようなカビがびっしりついてしまう病気です。うどんこ病によりカビに覆われてしまうと光合成がしにくくなるため、ラズベリーがうまく育たない原因となってしまいます。
この病気は、灰色かび病と違って多湿の状況だけでなく乾燥している環境でも発病してしまうことがあるので、注意しておきましょう。
うどんこ病を対策・予防する方法は、ラズベリーにとって良い環境を作ってあげることです。
具体的には、「日当たりの良い場所で栽培する」「乾きすぎず、多湿すぎない湿度にする」「定期的な水やりをする」といったことを心がけましょう。
また、植物専用の殺菌剤を使用することも効果的です。殺菌剤をラズベリーに散布するときは、葉の表面だけでなく裏側も念入りにかけるのがコツですよ。
害虫
ラズベリーはそこまで害虫被害に困ることはない植物ですが、念のために害虫の対策・予防を意識して栽培することに越したことはありません。害虫を見つけたらすぐに対処できるように、「ハダニ」「ハマキムシ」の対策方法について知っておきましょう。
ハダニ
ハダニとは、葉の裏側に集まり養分を吸汁するダニの仲間です。ハダニが葉の裏側の養分を吸った後は、白い斑点やかすり傷のようなものができ、放っておくとラズベリーの生育が阻害される原因となってしまいます。
なお、ハダニは水に弱いという特徴があるため、水や牛乳をスプレーに入れて吹きかけることが対策・予防になります。とくに牛乳は、ハダニを窒息させやすいので除去がしやすいです。
ただし、牛乳をハダニに吹きかけた場合はかかった牛乳を洗い流さないとカビや臭いの原因となります。そのため、牛乳スプレー使用後はラズベリーの葉を水で洗い流すようにしましょう。
ハマキムシ
ハマキムシは葉にくるまり生活をするイモムシの形をした害虫で、ラズベリーの葉や実を食べてしまいます。
もしラズベリーにハマキムシが住み着いてしまっていた場合は、ハマキムシがいる葉ごと取り除いておくか、殺虫剤を使用して駆除することが効果的です。
ただし、葉のなかにくるまっているハマキムシを駆除するためには、オルトラン水和剤やスミチオン乳剤などの浸透性の高い殺虫剤を使う必要があるので注意しましょう。
また、ハマキムシが入れないように防虫ネットをラズベリーに被せておくことも予防方法の1つとなります。
ラズベリー栽培後|果実の収穫のコツ
- 一季なり性:6月~7月
- 二季なり性:6月~7月と10月~11月
一般的に、ラズベリーの収穫期は上記の期間が最適だといわれています。品種によりますが、緑色でかたい実が柔らかく熟したタイミングを狙って収穫しましょう。ラズベリーの実は日持ちが良くないため、熟した場合はなるべく早く収穫することが大切です。
ラズベリーの実の収穫は、素手ではがすようにつかむだけで簡単におこなうことができます。ただし熟したラズベリーはとても柔らかくつぶれやすいため、摘み取る際は以下のことに気をつけましょう。
- 真ん中が空洞になっているため、つぶさないように優しくつかむ
- 隣の実を落とさないように、枝を引っ張るときは注意する
- 落下・潰れ対策として収穫したラズベリーは容器に入れておく
おもにこの3点を頭に入れておき、ラズベリーをしっかりと収穫できるようにしてみてください。また、収穫後しばらくしたらラズベリーの剪定もおこなう必要もあるので忘れないようにしましょう。
2つの増やし方でラズベリーをたくさん収穫しよう!
ラズベリーをたくさん収穫したいのであれば、「挿し木」「株分け」の2つの方法でラズベリーの株を増やすことが可能です。それぞれの方法について、簡単にご紹介しましょう。
株分け
株分けとは、植物の株から新しく生えてくる子株とよばれる根を切り離し、新しく植え付けることで株を増やす方法です。株分けは、ラズベリーの収穫量を増やす方法として一般的となっています。
ラズベリーの場合、4月~5月ごろになると子株が地上に出てくることがあるので、それを切り取って別の場所に植え付けることで、ラズベリーの株を増やすことが可能です。
挿し木
挿し木とは植物の枝を土に植えることで、新しい根を生やして株を増やす方法です。挿し木の場合、ラズベリーでは以下の2つの方法を取ることができます。
- 緑枝挿し
-
緑色の葉が付いた枝を土に挿す
- 休眠枝挿し
-
落葉後の生きた枝を土に挿す
またの緑枝挿しは6月~7月ごろ、休眠枝挿しは2月~3月ごろにおこなうことが可能です。挿し木をしたい時期によって、適切な方法でラズベリーの株を増やすとよいでしょう。
まとめ
ラズベリーは果物のなかでも栽培方法が比較的簡単なため、家庭菜園に慣れていない家庭の方でも収穫までたどりつくことは可能です。ただし、今回ご紹介したようなラズベリーの剪定方法や育て方など、栽培の際に知っておくべき点は多くあるので、注意しながら育てていくようにしましょう。
また、ラズベリーの剪定についてわからない・不安なことがあれば、プロの業者に依頼してみるというのも1つの手段です。
この記事ではラズベリーの栽培方法から収穫について一通りご紹介しているので、困ったことがあれば、まずは本記事の内容を参考にしてみてください。