シロアリ女王の特徴がまるわかり！巨大な体や長い寿命の秘密を徹底網羅

「シロアリの女王にはどんな特徴があるんだろう？」
と疑問をお持ちですね？

女王というと偉そうなイメージがしますが、そういうわけではありません。
シロアリの女王は別名「生殖虫」ともいって、いわば卵を生産する係です。
働きアリや兵隊アリなどと同じような、ひとつの役割に過ぎないのです。

とはいえ、奇妙な見た目や10年以上の寿命など、シロアリの女王には他のシロアリとは一線を画す多くの特徴があります。

この記事では、まだまだ謎も多いシロアリの女王の生態をわかりやすく解説します。

この記事を読めば、シロアリの女王に関する疑問がスッキリ解消されることでしょう。

シロアリの女王アリは腹部が肥大した特徴的な見た目

シロアリの女王の大きな特徴は、腹部が膨らんだ見た目です。
腹部が縦に大きく膨らんで、まるでアリにイモムシをくっつけたような見た目をしています。

以下は、イエシロアリの女王の映像です。

以下は、ヤマトシロアリの女王の映像です。

シロアリの女王の腹部が大きいのは、卵巣が発達しているからです。

女王のおもな役割は卵を産むことです。
よりたくさんの卵を産むために大きな卵巣を持っており、その腹部によって、シロアリの女王は他の個体の数倍も大きくなっています。

イエシロアリという種類の女王は、働きアリの10倍近い体長4cmに達するものもいます。

シロアリの種類ごとの大きさ

体色は種類によって違いがあり、腹部が白っぽくて黒いラインが入っているものや、全体に黒っぽいものなどがあります。

参考：森本桂，シロアリの生態，1965
参考：森林生物データベース｜ヤマトシロアリ
参考：国立環境研究所 侵入生物DB｜イエシロアリ
参考：森林生物データベース｜イエシロアリ
参考：横浜市｜洗面所に羽のある虫がたくさん出現！！（シロアリ）　
参考：秋田市公式サイト｜衛生害虫（シロアリ）
（最終閲覧日：2024年1月11日）

シロアリの女王は1年中卵を産み続ける

シロアリの女王は季節に関係なく、1年中毎日卵を産み続けます。
よく住宅に被害をおよぼすヤマトシロアリの場合、1日に25個程度の卵を産むといわれています。

シロアリの女王が産んだ卵の特徴や、孵化するまでの様子を解説していきます。

参考：森本桂，シロアリの生態，1965
参考：公益社団法人日本しろあり対策協会，「しろあり」No.153（平成22年1月号）
参考：公益社団法人日本しろあり対策協会，「しろあり」No.127（平成14年1月号）
（最終閲覧日：2024年1月11日）

シロアリの卵の大きさと見た目

シロアリの卵はたわら型で、大きさが0.7mm程度です。
卵の大きさや見た目は、種類によって多少の違いがあります。

シロアリの種類ごとの卵の特徴

参考：山野勝次，シロアリ目，公益財団法人 文化財虫菌害研究所「文化財の虫菌害」No.60（平成22年12月号）
（最終閲覧日：2024年1月11日）

以下は、ヤマトシロアリの卵をとらえた映像です。

シロアリの卵は1～3ヵ月で孵化する

シロアリの卵は、30日～90日程度で孵化します。
仮に家に1匹のヤマトシロアリの女王が住み着いたとして、早ければ1ヵ月ほどで数百匹のシロアリが生まれることもあるのです。

シロアリの繁殖力の強さがよくわかります。

シロアリの女王アリ・王アリの寿命は10年以上

シロアリの女王や王は寿命が10年～20年程度と、昆虫としては非常に長命な特徴があります。

シロアリの女王や王が長命である理由はまだ解明されていない部分が多いですが、優れた抗酸化力を持っているためと考えられています。

抗酸化力とは、老化の原因になる活性酸素を制御する能力です。

呼吸によって体内に取り込まれた酸素は、一部が体内で活性酸素に変わります。
活性酸素には酸化作用があり、老化の原因になるのです。

シロアリの女王や王はこの活性酸素を、以下のような仕組みで制御していると考えられています。

• 活性酸素を無害化する抗酸化酵素を多く持っている
• 代謝調節をして活性酸素の発生を抑制している

また、女王や王が食べる特別な食事であるロイヤルフードとの関連も、研究が進んでいます。

参考：井内良仁，長寿命昆虫ヤマトシロアリの生存戦略，山口大学, 大学院創成科学研究科，2019
（最終閲覧日：2024年1月11日）

シロアリには女王以外に副女王もいる

シロアリの群れには女王アリの他に、副女王アリという個体が複数あらわれることがあります。
副女王は女王と同じように生殖ができます。

副女王は女王が死んでしまったときや、女王から離れた場所に分巣ができたときなどにあらわれます。
巣の存続や拡大のために、いわば女王の代替要員として卵を産むのが副女王の役割です。

副女王は、ニンフと呼ばれる階級の個体が変化して出現します。
副女王になる前のニンフには、生殖能力はありません。

普段は女王の出す女王フェロモンによって、ニンフは副女王にならないよう抑制されています。
しかし、女王が死んだり分巣ができて女王から離れたりすると、女王フェロモンの影響がなくなります。
するとニンフが副女王に変化し、生殖をおこなえるようになるのです。

ニンフは他の働きアリや兵隊アリとは違って、女王が単為生殖によって産みます。
単為生殖とは、オスと交尾をせずにメスだけで卵を産むことです。

単為生殖で生まれ産まれたニンフは、いわば親のクローンです。
自分のクローンに女王を継承させることで、女王が自分の遺伝子を有利に残す仕組みと考えられています。

役目を終えた女王は、最期は自分の子どもである仲間たちに食べられてしまうこともあります。

シロアリの世界では、弱った仲間や死骸を食べることは日常的におこなわれている行動です。

参考：京大昆虫研HP｜京都大学大学院 昆虫生態学研究室
参考：松本忠夫，三浦徹，社会性昆虫としてのシロアリ その繁殖戦略とカースト分化，2001
参考：西本孝一，シロアリの摂食行動，1975
（最終閲覧日：2024年1月11日）

次に、シロアリの群れ全体の社会構成についても解説します。

女王を支えるシロアリの階級と役割

シロアリは群れのなかに階級（カースト）があり、役割を分担して生活しています。
シロアリの群れは、以下のような階級で成り立っています。

女王アリ・王アリ

ペアになって繁殖をおこなう個体。
初期は巣作りやエサ集めなどもおこなうが、働きアリが増えると繁殖に専念する。
生殖虫、一次生殖虫、創設女王、創設王などとも呼ばれる。

羽アリ

背中に翅（はね）が付いていて、飛ぶことができる個体。
巣から地上に出てメスとオスのペアを作り、新しい巣の女王や王になる。
有翅虫（ゆうしちゅう）とも呼ばれる。

ニンフ

副女王アリや羽アリになる前段階の個体。
女王の単為生殖で産まれたものは副女王アリに、有性生殖で産まれたものは羽アリになる。
翅芽虫（しがちゅう）とも呼ばれる。

副女王アリ・副王アリ

女王が死んだあとなどに女王や王になった個体。女王のあとを引き継いで繁殖をおこなう。
二次生殖虫、副生殖虫などとも呼ばれる。

兵隊アリ

おもに巣の防衛をおこなう個体。
シロアリの種類によって、攻撃をするもの、危険を知らせるだけのものなどがいる。
兵蟻（へいぎ）、ソルジャーとも呼ばれる。

働きアリ

エサ集め、幼虫や女王の世話、巣作りなど群れの存続に関わる仕事全般をおこなう。
住宅などを食害するのはおもにこの階級の個体。
職蟻（しょくぎ）、ワーカーとも呼ばれる。

シロアリの働きアリは幼虫と同じ見た目

シロアリは幼虫も成虫も、基本的に似たような見た目をしています。
シロアリは不完全変態といって、サナギにはならず、同じ見た目のまま大きくなるのです。

幼虫は成長すると、働きアリやニンフ、兵隊アリに変化します。
このように役割が変化することを、カースト分化といいます。

シロアリの生態や社会構造については、以下の記事でも詳しく解説しています。

参考：石川由希，シロアリの社会性とそれを支える生理／神経機構，2016
参考：越川滋行・三浦徹，シロアリのカースト分化と遺伝子発現の解析－ソシオゲノミクスへの展望－，2007
（最終閲覧日：2024年1月11日）

シロアリが集団で生活できるのはフェロモンのおかげ

シロアリは群れのなかで、フェロモンを分泌してコミュニケーションや役割の決定付けをしていると考えられています。

シロアリが分泌するフェロモンには、以下のようなものがあるといわれています。

女王フェロモン（生殖虫分化抑制フェロモン）

女王と卵から分泌される揮発性のフェロモン。
他のメスが生殖するのを抑制する。

卵認識フェロモン

卵から分泌されるフェロモン。
暗い巣の中で働きアリに卵を認識させ、運搬や世話の行動を促す。

兵隊フェロモン（分化抑制フェロモン）

兵隊アリが分泌する揮発性のフェロモン。
働きアリが兵隊アリに分化するのを抑制し、兵隊アリの数を調整している。

性フェロモン

巣から出たメスの羽アリが分泌するフェロモン。
オスを引き寄せてペアを作り、女王と王になる。

道しるべフェロモン

働きアリが分泌するフェロモン。
エサ場から巣に戻ったり仲間にエサの場所を知らせたりするために地面に付ける。

警報フェロモン

仲間に危険を知らせる揮発性のフェロモン。

このようなフェロモンの働きによって、シロアリたちはそれぞれの役割をしっかりとまっとうできているのです。

参考：池田耕一，3.防蟻・防虫による室内化学物質汚染の状況と対策に関する調査研究，1999
参考：松浦健二，シロアリの卵認識フェロモンおよび女王フェロモンの特定と応用への展開，2012
参考：京都大学｜世界で初めて兵隊フェロモンを特定－衛生兵としての役割も担う兵隊シロアリ－
参考：独立行政法人森林総合研究所，「研究の“森”から」No.141（2005年10月31日号）
（最終閲覧日：2024年1月11日）

シロアリ駆除は女王アリ・王アリ・卵まで残さず徹底的に！

シロアリを巣ごと根絶させたいなら、女王アリと王アリを含めた巣の全体を残さず駆除する必要があります。
シロアリの巣は、数十匹残っていれば再生が可能だからです。

女王と王が生き残っていれば新たなシロアリが次々に産まれ、シロアリの群れは存続します。
また、女王や王が死んでも卵とその世話をする働きアリが残っていれば、新たな副女王や副王が育ちます。

巣の全体を駆除しなければ、本当にシロアリを駆除したことにはなりません。

シロアリ駆除はプロの薬剤散布が効果的

家に発生しているシロアリを駆除したいなら、シロアリ駆除のプロに依頼するのがおすすめです。
プロのシロアリ駆除は、女王を含めたシロアリの巣全体に対処できるからです。

プロはおもに、接触したシロアリを死滅させる薬剤を使ってシロアリを駆除します。
シロアリが発生している箇所に、薬剤を散布したり注入したりするのです。
家に侵入しているシロアリに直接薬剤を触れさせることで、効率的に駆除が可能です。

また、床下一面に薬剤を散布しておけば、今後のシロアリの発生を予防できます。
シロアリ駆除薬剤の効果は、5年程度持続するためです。
たとえ地中にシロアリの巣が残っていても、家に侵入しようとするシロアリを阻止できます。

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